2020 Fiscal Year Research-status Report
形状、粒径、物性に多様性を持った貴金属ライクな純銅ナノ粒子の触媒への応用
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19K05187
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
田中 秀樹 中央大学, 理工学部, 教授 (40312251)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 銅ナノ粒子 / メチルビオロゲン / 凝集体 / 有機酸 / 分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
触媒として有望視されながらも、合成の困難さから実現されてこなかった純銅ナノ粒子について、触媒反応への応用展開を試みた。 2020年度は、第一に、触媒反応の起点となる電子移動反応のシンプルなモデル系構築を想定した、電子アクセプターであるメチルビオロゲンを用いた反応系の検討を行った。メチルビオロゲンの鮮やかな色変化によって、銅ナノ粒子からメチルビオロゲンへの電子移動が速やかに起こることが明確にわかったが、その反応速度は、ナノ粒子の凝集体においてより速いことが見いだされた。通常、凝集状態は、ナノ粒子触媒の失活に結びつきがちであるが、本系においては、凝集状態にあってもナノ粒子間の隔離が確保されている結果失活に結びつかず、むしろナノ粒子-メチルビオロゲン間の距離の短縮による電子移動効率の向上に結びつくことがわかった。 第二に、こうした触媒反応のさらに基礎にあたる、銅ナノ粒子自身の反応に伴う分解過程の解明にも取り組んだ。各種成分分析から、ナノ粒子合成過程における副産物である酢酸によって、こうした分解反応が促進されている可能性が示唆された。そこで、ナノ粒子の反応原液からの厳格な分離と、明示的な酢酸の制御添加を組み合わせて検証を行ったところ、本仮説が確認されただけでなく、シュウ酸等他の有機酸でも分解反応を誘起できることがわかった。こうして得られた研究成果については学会発表を行っただけでなく、論文による公表も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、触媒反応の起点となる銅ナノ粒子自身の分解反応と、そこからの電子移動反応について、重点的に取り組んだ。コロナ禍のため、当初計画していた、SPring8等を活用した共同研究や、学会を通した研究交流は全く行うことができなかった。しかしながら、大学内の限られた研究資源をフル活用した結果、学会発表や論文発表は計画通り行うことができた。以上のように、外部的要因であるにしても研究進捗としては思うようにいかなかった面はあるものの、研究成果の公表については順調に行えたことから、総合的には「順調に進展している」といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
銅ナノ粒子の分解およびそこからの電子移動過程について解明を行ったことから、銅ナノ粒子触媒反応の基礎が固められた状況にあるため、より応用的な触媒反応の探求を行う。具体的には、もともと助触媒としてよく用いられるゼオライト系の材料を用いた高効率触媒の探求を行う。またこれまで行ってきた、アクリジンオレンジ、メチルビオロゲンといった色素系材料を用いた触媒反応系の深化探求も行い、銅ナノ粒子の触媒反応への立体的展開を図る。
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Causes of Carryover |
当初、SPring8等を活用した共同研究および学会活動を通した研究交流によって、研究の進展を立体的かつ加速的に行う予定であったが、コロナ禍のため全く実施できなかった。また、研究実施体制についても、コロナ対策のため、研究室の稼働を50%以下に低減させることが要請されたため、必然的に試薬や消耗品類の消費量が半数以下となった。こうした外部的要因によって先送りせざるを得ない状況ではあったが、2021年度はワクチン接種の進展などを通してこうした外部的状況が改善すると見込まれることから、2021年度に加速的に研究を進捗させるためにも、次年度使用することとした。
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Research Products
(6 results)