2021 Fiscal Year Research-status Report
形状、粒径、物性に多様性を持った貴金属ライクな純銅ナノ粒子の触媒への応用
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19K05187
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
田中 秀樹 中央大学, 理工学部, 教授 (40312251)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 銅ナノ粒子 / ナノシート / 光アンテナ / エネルギー移動 / プラズモン発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
銅ナノ粒子は、還元による合成が難しいだけでなく、合成されたナノ粒子が容易に酸化されやすく、純銅ナノ粒子の触媒への応用は難しいとされてきた。2021年度は、こうした銅ナノ粒子に特有の表面プラズモン共鳴に関連する反応を重点的に検討した。この表面プラズモン共鳴は、目視でも確認できるほど強い吸収を示す反面、銅原子間の金属結合による非常に速いエネルギー散逸を伴うものであり、この点がエネルギーの利用効率を著しく低減させるものとして知られている。そこで、光アンテナとして色素分子を導入しこれをエネルギードナーとして用い、その受光エネルギーを銅ナノ粒子にエネルギー移動した後、この表面プラズモン共鳴から発光させる、いわゆる表面プラズモン発光反応系の実現を目指した。その際、散逸に発光が打ち勝つための条件として、エネルギー準位のマッチングおよびその帯域の強化が重要である。前者については銅ナノ粒子、分子相互のエネルギーダイアグラムを意識したエネルギーマッチング度の高い分子選択が重要となること、後者については銅ナノ粒子密度を高めることで、よく知られた表面プラズモンによる増強効果を用いた量子効率の強化を図った。その結果、単にプラズモン発光に成功したというだけでなく、その量子効率が40%というこれまでにない高校率でプラズモン発光を実現させることにも成功した。こうして得られた研究成果については学会発表を行っただけでなく、論文による公表も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、銅ナノ粒子特有の表面プラズモン共鳴に関連する反応について、粒子密度をコントロールすることによる増強効果の発現およびエネルギーダイアグラムを意識した分子選択を行うことによるエネルギー移動の制御という点について、定量的な理解を深めることができた。一方で昨年度に引き続き、コロナ禍のため、当初計画していた、SPring8等を活用した共同研究や、学会を通した研究交流は全く行うことができなかった。こうした制限を受けながらも、学会発表や論文発表は計画通り行うことができた。以上のように、外部的要因による悪影響は受けたものの、研究成果の公表については順調に行えたことから、総合的には「順調に進展している」といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
銅ナノ粒子反応について、粒径、形状に関する指針だけでなく、数密度による協同効果の制御、エネルギーダイアグラムを意識した分子選択の指針などを打ち立てたことから、これらを意識したより応用的な触媒反応の探求を行う。具体的には、酸化還元反応への応用、光・電子・熱エネルギーなどを利用した反応への応用など立体的展開を図る。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続き、コロナ禍のため、SPring8等を活用した共同研究および学会活動を通した研究交流などが全く実施できなかった。また、研究実施体制についても、コロナ対策のため、研究室の稼働を50%以下に低減させることが要請されたため、必然的に当初予定ほど試薬や消耗品類の消費が進まなかった。こうした外部的要因によって先送りせざるを得ない状況ではあったが、2022年度はワクチン接種などの社会全体でのコロナ禍適合の進展が見込まれることから、2022年度に加速的に研究を進捗させるためにも、次年度使用することとした。
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Research Products
(13 results)