2022 Fiscal Year Research-status Report
形状、粒径、物性に多様性を持った貴金属ライクな純銅ナノ粒子の触媒への応用
Project/Area Number |
19K05187
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
田中 秀樹 中央大学, 理工学部, 教授 (40312251)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 銅ナノ粒子 / セレン化銅ナノワイヤ / PEDOT:PSS / 熱電材料 / パーコレーション / 光還元法 / 電気伝導 / ゼーベック係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
銅ナノ粒子は、還元による合成が難しいだけでなく、合成されたナノ粒子が容易に酸化されやすい純銅ナノ粒子について、光還元法を駆使した構造多様性をもたせた合成法の確立を行ってきた。2022年度は、こうした多様性を、有益な複合体合成にも発展させる手法についてまずは検討を行った。具体的には、半導体ナノワイヤとして知られるセレンナノワイヤを光還元法によって、電気伝導性に優れるセレン化銅ナノワイヤの合成を行った。合成物を高分解能電子顕微鏡で観察したところ、構造を保持したままナノワイヤ全体が均一にセレン化銅になっていることがわかった。またXRD測定を行ったところ、その結晶構造は電気伝導性に優れるα相であることがわかった。こうして得られたナノワイヤを、有機物熱電材料として知られているPEDOT:PSS中にスピンコート法で埋め込んだところ、40%を超える混合率において、飛躍的に材料全体の電気伝導度が向上することがわかった。これは薄膜内においてナノワイヤ同士がネットワーク構造を形成するいわゆるパーコレーションによって実現されていることを明らかにした。混合によってゼーベック係数は若干低下するため、これらを乗算して求められる熱電材料の効率の指数としてよく用いられるパワーファクターベースでは、53%の混合比において性能が最大化されることを明らかにした。こうして得られた研究成果については学会発表を行っただけでなく、論文による公表も行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、半導体ナノワイヤであるセレンナノワイヤを光還元法によってセレン化銅とする反応に取り組んだ。300ナノメートル程度の管径を有するナノワイヤについても、全体の組成がセレン化銅となり、結晶相も最も電気伝導性に優れるα相が形成されることを明らかにした。こうして得たナノワイヤを有機熱電材料として知られているPEDOT:PSSとの複合薄膜にしたところ、熱電性能の飛躍的な向上が実現されることがわかった。その過程において、熱電材料について専門的に研究を行っている大阪大学と共同研究することにより、精度の高いデータを得ることにも成功した。一方で昨年度に引き続き、コロナ禍のため、当初計画していた、SPring8等を活用したより高精度の材料分析や、学会を通した研究交流は全く行うことができなかった。こうした制限を受けながらも、学会発表や論文発表は計画通り行うことができた。以上のように、外部的要因による悪影響は受けたものの、研究成果の公表については順調に行えたことから、総合的には「順調に進展している」といえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
光還元法について、有益な異種元素との複合化、すなわち半導体であるセレンをセレン化銅とし電気伝導性に優れたナノワイヤとする手法についても拡張できることを明らかにしてきたことから、今後はこうした複合材料の創製まで含めた多様性をもったナノ材料創製に取り組む。またこのセレン化銅ナノワイヤは、α相構造で構成されていたが、実際にはPEDOT:PSSとの接触反応によって一部がβ化する問題を把握しており、こうした相構造の起源、転移のダイナミクスなどについても引き続き検討を行う。その他、酸化還元反応への応用、光・電子・熱エネルギー変換への応用など立体的展開を図る。
|
Causes of Carryover |
昨年度に引き続き、コロナ禍のため、一部大阪大学との共同研究など再開できたものの、SPring8等を活用したより高精度な材料分析や学会活動を通した研究交流などが実施できなかった。また、研究実施体制についても、コロナ対策のため、研究室の稼働を50%以下に低減させる要請が一部なされたため、必然的に当初予定ほど試薬や消耗品類の消費が進まなかった。こうした外部的要因によって先送りせざるを得ない状況ではあったが、2023年度は大学を含めた社会全体として研究活動の正常化が見込まれることから、2023年度に加速的に研究を進捗させるためにも、次年度使用することとした。
|