2021 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒顕微過渡吸収測定法によるペロブスカイト結晶中の励起子ポラリトン挙動解明
Project/Area Number |
19K05190
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
片山 哲郎 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 助教 (80592360)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 顕微過渡吸収分光 / 有機無機ハロゲン化鉛ペロブスカイト / 単一微結晶計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、振動未緩和状態のホットキャリアや電子励起状態と光の相互作用した励起子ポラリトンの化学反応が注目されてきている。これらは光エネルギー損失の少ない次世代型光電変換材料の実現に不可欠な化学反応であるが、ホットキャリアや励起子ポラリトンはピコ秒以内の短い時間で進行し、かつ空間的に限られている状態からの反応であるため未だ明らかでない点が多い。 2021年度ではハロゲン化鉛ペロブスカイト結晶を対象とし、時・空間分解能を有するフェムト秒顕微過渡吸収分光手法と偏光解消実験を組み合わせ、光生成するホットキャリアおよび励起子ポラリトン状態の時空間ダイナミクスを測定し、その物理化学的な性質を明らかにした。実験では我々の有する既存の計測装置に本研究費で購入した消耗品により非同軸パラメトリック発振器を自作し、①波長可変、単一波長の過渡吸光度イメージング計測、②スーパーコンティニューム光による顕微過渡吸収スペクトル計測、の二点を計測できるように構築し、ハロゲン化鉛ペロブスカイト結晶のキャリア分布と電子スペクトル形状変化を解明にした。その結果、顕微過渡吸収イメージング計測から励起直後から生じる幾何学模様をした不均一なキャリア分布が観測された。これは誘導放出光の増大が局所的に発生し、キャリア消失に空間的不均一性が観測されたことを示唆している。また顕微過渡吸収スペクトル計測において観測光の偏光を結晶軸に対して垂直、偏光で計測した場合、過渡吸光度スペクトルに明確な偏光依存性があった。この結果は励起直後の電子状態から強く偏光に依存性を示す電子状態が存在しており、この結果から励起ポラリトンが初期の電子状態に含まれているが明らかとなった。本研究成果は誘導放出増幅に対する知見だけでなく、励起子ポラリトンを利用した次世代型光電変換系の材料設計指針を提出する上でも重要である。
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