2019 Fiscal Year Research-status Report
超臨界乾燥における自発的なナノ構造形成と材料合成への応用
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19K05193
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
竹下 覚 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (90631705)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超臨界乾燥 / エアロゲル / キトサン / 小角X線散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
物質を臨界温度・臨界圧力以上に置くと、気体とも液体とも相境界を持たない超臨界状態となり、超臨界状態を経由してゲルを乾燥させる方法を超臨界乾燥という。超臨界乾燥では乾燥中に気液界面が発生しないため、通常の乾燥では避けられない界面張力による応力が発生せず、ゲル内部の微細構造に影響を与えることなく溶媒だけを除去することができる乾燥法として確立されてきた。一方、研究代表者の先行研究により、生体由来の高分子であるキトサンを素材とするゲルにおいては、これまで微細構造に影響を与えないと考えられてきた超臨界乾燥が構造形成に寄与していることが示唆されている。そこで本研究では、ゲル内部の微細構造形成機構とゲルの製造・乾燥プロセスとの関連を明らかにすることで、ポリマー系ゲルおよびエアロゲルの微細構造制御法の構築に取り組んだ。 本年度は、モデル材料にキトサン系ゲルを定め、種々の溶媒を用いた化学架橋キトサンエアロゲルの作製方法を確立し、溶媒の極性や溶媒-ポリマー間の親和性(Flory-Huggins χ parameter)によって、ゲルのマクロなサイズ変化が説明できることを実証した。さらに、スイス連邦材料試験研究所(Empa)の協力のもと、マクロなサイズ変化と微細構造形成との関連性を小角X線散乱法によって探究したところ、超臨界乾燥溶媒(CO2)と同様の非極性溶媒中で生じるサイズ変化に、微細構造の形成が付随して生じることを突き止めた。これらの結果は、超臨界乾燥中に生じる微細構造の形成は、ゲルを構成するポリマーと乾燥溶媒との親和性が低いことによるポリマー鎖どうしの凝集に起因することを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微細構造形成とマクロなサイズ変化との関連性を解明したことで、微細構造制御法の足掛かりとなる成果が得られた。スイス連邦材料試験研究所との国際共同研究においても緊密な連携が取れており、おおむね順当に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を国際共同研究に基づく論文発表として取りまとめるとともに、国内学会・国際会議にて成果発表を行う。さらに今後は、これらの結果を異なるゲル化メカニズムや他のポリマー系ゲル、および超臨界乾燥を使わない乾燥法などに発展させ、幅広い材料系で成立する微細構造形成の一般論の構築に取り組む。
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Causes of Carryover |
令和元年度の成果について国内学会・国際会議発表のための費用を確保していたが、さらに十分な検討を行ったうえで研究成果を取りまとめたほうが適していると考えられたため、学会発表を繰り越した。令和2年度以降により包括的な研究として取りまとめ、国内学会または国際会議での発表を行い、国内外の研究者に本課題の成果をアピールすることを予定している。
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