2020 Fiscal Year Research-status Report
グラフェン3次元ナノ構造体の電子状態の解明と物性制御
Project/Area Number |
19K05195
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
田邉 洋一 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (80574649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 良宗 東北大学, 理学研究科, 准教授 (30435599)
伊藤 良一 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (90700170)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | グラフェン / 3次元構造体 / 電気伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
I. 3次元ナノ多孔質グラフェンの曲率半径に依存した電子状態の解明 昨年度に引き続いて、磁場中電気伝導度の測定から、3次元曲面によるグラフェンの電気伝導物性への影響を調べた。試料は、曲率半径が500-1000nmの低曲率の試料、50-150nmの中程度の曲率の試料、25-50nmの高曲率の試料を用いて実験を行った。その結果、中程度の曲率を持つ曲率半径50-150nmの試料において、グラフェンのディラック電子による弱局在・弱反局在効果を示すlogTに比例した電気伝導度の磁場に対する増減を観測した。一方で、高曲率の25-50nmの試料においては、弱局在・弱反局在効果は大幅に抑制されており、代わりに、曲面による強い電子散乱に起因して、電子間相互作用が電気伝導度に強く影響することが明らかになった。これらの結果から、グラフェンの特性を保った状態での3次元集積化は、曲率半径が50-150nm程度までは可能であるということが明らかになった。
II. 有機分子/グラフェン界面の形成によるキャリア制御効果 曲率半径が50-150nmの試料を用いて有機分子/グラフェン界面におけるキャリア制御効果を明らかにすることを目的として、電気2重層トランジスタの測定を行った。有機分子はドナー型のTTFを用いた。その結果、有機分子を用いないデバイスでは、グラフェンの電子状態を反映した両極性伝導が観測されるのに対して、TTFを溶解したデバイスでは、ゲート電圧を負に掃引すると中性点を超えた付近で電気抵抗が一定になることを観測した。この結果は、TTF/グラフェン界面における電子注入効果がゲート電圧により制御可能であることを示している
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続いて、3次元曲面によるグラフェンの電気伝導物性への影響を明らかにすることを目的として磁場中電気伝導度の測定を行った結果、低曲率から中曲率の試料においては、グラフェンが持つディラック電子による低散逸な電気伝導特性が保たれている一方で、高曲率の試料においては曲面による強い電子散乱効果によってこれらの性質が大きく抑制されることを明らかにすることが出来た。この結果は、本研究課題の目的である3次元集積化されたグラフェンの電子状態の解明と制御の前半部分に対応する成果である。加えて、グラフェンの性質を保った中曲率の試料を使用して、有機分子/グラフェン界面の形成によるキャリア制御を試みた結果、ゲート電圧の制御によって、TTF/グラフェン界面における電子注入効果がゲート電圧により制御可能であることを示唆する結果を得ることが出来た。これらの結果は、本年度の計画とおおよそ一致することから、順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果をもとに、以下の研究を推進する。 I.F4-TCNQ分子を溶解させたイオン液体を用いた電気2重層トランジスタの測定 TTF分子を用いた電気2重層トランジスタの測定から、ゲート電圧によってTTFからグラフェンへの電子ドープを制御可能な結果が得られら。この結果をもとに、今度は、アクセプター型の有機分子であるF4-TCNQを用いて同様な実験を行うことで、F4-TCNQからグラフェンへのホールドープの制御が可能であるかを明らかにする。 II.TTF, F4-TCNQ分子をそれぞれ溶解させたイオン液体を用いた電気2重層トランジスタを用いた3次元グラフェンPN接合の作製 本年度の結果から、ゲート電圧によって、チャネル上でのTTF分子からの電子ドープ効果を制御可能であることが明らかになった。この結果をもとに、ソースドレイン電圧を制御することによって、チャネル上で局所的にTTFからの電子ドープが起こっている領域を作製することによって予定通りPN接合の作製を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍において、参加予定の国内学会がオンライン開催となったため、17万円ほどの繰り越しが生じた。本年度作製予定のナノ多孔質グラフェンPN接合の電気伝導物性を精密に測定するため、繰越金と本年度予算を併せてロックインアンプを購入し、実験を進める予定である。
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