2021 Fiscal Year Research-status Report
CdSeナノプレートレットを入れた微小光共振器の作製と室温ポラリトンレーザー発振
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19K05197
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
小田 勝 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30345334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 久雄 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 講師 (70274305)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ナノプレートレット / 微小光共振器 / ポラリトン / 強結合 / レーザー発振 |
Outline of Annual Research Achievements |
光の波長程度の間隔で向かい合う2枚の鏡で構成された微小光共振器中に、光との相互作用の強い物質を入れると、光と物質の結合状態である共振器ポラリトンが形成される。共振器ポラリトンは、閾値の無いレーザー発振に利用できると期待されている。室温においてポラリトンをレーザー発振させるためには、①物質の振動子強度が大きく、②発光の量子効率が高く、③高性能な微小光共振器内に入れられる物質が必要であり、物質として無機半導体を用いた場合には、主に①の制限により紫外域の波長で発光する材料でしか室温発振が難しいという課題がある。 本課題では、コロイド状CdSeナノプレートレット(NP)の分散薄膜が、NPに特有のナノ構造により条件①を満たす可視域の波長で発光する材料であることに着目する。応募者の持つ結晶成長技術を応用して、分散薄膜中で条件②を満たすことのできるNPの合成技術を開発する。さらに、自らが開発してきた分散粒子用微小光共振器素子の作製技術の向上を通じて、条件③の実現を目指す。これらの技術の連結による、ポラリトンの室温発振に向けた素子の作製を行う。 昨年度までに、条件①と②を概ね満たすNPの合成法を開発し、そのNPを入れた共振器素子を作製した。その結果、室温でポラリトンを形成できて、その発光が得られる新規素子を得た。本年度は第一に、この素子の室温発振を検証するための基礎データとして、この素子の基礎光学特性(反射・発光スペクトル、寿命寿命)の角度依存性を測定した。その結果、他の共振器素子では観測例の無い、特異な発光現象を見出した。そこで、作製条件の異なる試料の作製と光学計測を重ね、この特異な発光特性の解明を行った。第二に、室温発振のための素子作製法の改良と検証を進めた。現時点で室温発振は得られていないが、室温発振に向けた素子作製法の基盤技術が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.新型コロナ対策により一部の実験用品の入手と実験着手が遅れた。 2.昨年度までの研究を通じ、室温でポラリトンの発光が得られる共振器素子の作製法を開発した。計画では、本年度にこの素子の発光の基礎特性を確認した上で、レーザー発振に関わる実験に注力する予定であった。一方、その基礎特性の確認段階において、他の共振器素子では未確認の、特異な発光現象を見出した。この特異な現象自体に新規性があり学術的価値があること、並びに、レーザー発振の実験準備としてこの現象の特性を把握しておく必要があるため、「研究実績の概要」に記入したように、そのための試料作製と光学測定・解析を行った。当初の計画よりこの分の遅延が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業期間の延長により対応する。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」で記載したように、新型コロナ対策により一部の実験用品の入手と実験着手が遅れたこと、および、本課題研究を実施する中で新現象が見つかったことにより、当初の計画より若干の遅延が生じた。そのため、補助事業期間を1年延長し当初の計画を全て実施する。それに伴い、残額を全て使う予定である。
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Research Products
(5 results)