2019 Fiscal Year Research-status Report
Magnetic anisotropy control of adjacent magnetic thin films using electrical manipulation of quantum well states in 4d / 5d metal thin films
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19K05199
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐藤 徹哉 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (20162448)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 量子井戸 / 磁気異方性 / 4d/5d遷移金属 / 超薄膜 / 磁性制御 / 電気的手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
4d/5d遷移金属薄膜に形成される量子井戸状態が隣接磁性薄膜の磁気異方性に及ぼす影響を明らかにし、その知見を基に電場を用いて磁気異方性の操作を目指す。(100)配向したPdとPt薄膜に形成される量子井戸が磁性発現に本質的な影響を及ぼしていること、およびこれらの金属薄膜と隣接する金属との間に生じる磁気的影響を調べた。 4d遷移金属のPd薄膜では強磁性の発現と膜厚の関係が明らかにされて来たが、第一原理計算から、界面電子状態の変調を介してPd(100)超薄膜の磁性の制御が可能であることを見出した。Au / Pd(100)界面を形成すると、d電子量子井戸状態の波動関数の混成が誘導され、散乱位相シフトの項が変調されるが、Al界面を形成しても散乱位相シフトは変化しない。これより、波動関数の混成を使用して界面電子状態を調整することによって位相シフトを変更させてPd膜のフェルミエネルギー付近の状態密度を変化させ、磁性の変調を引き起こすことが可能であることを明らかにした。また、Fe/Pd多層膜の磁気異方性のPd層厚依存性を調べた。磁気異方性とFeの軌道磁気モーメントとスピン磁気モーメントの比morb/mspiも同様にPdの層厚6原子層周期で変化した。この周期が量子井戸による強磁性発現の周期と一致することから、Pd層に形成される量子井戸がFeの磁気モーメントやmorbの変化を介して磁気異方性を変調することが示唆された。 5d遷移金属のPt(100)超薄膜においても膜厚に依存して周期的に強磁性が発現し、放射光を用いた磁気円二色性の測定により、その強磁性が Ptに起因することを明らかにした。これより、量子井戸の形成に起因する磁性の発現がPtでも生じることが分かる。また、その磁性における軌道成分の寄与が小さいことが分かった。また、Ptの磁性の電気的測定ために異常ホール効果測定系を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Pd超薄膜に関しては、その量子井戸に関連する磁気的起源が実験と理論の両面から概ね明らかになっており、隣接した金属との間で量子井戸を通して磁気的変調が生じることも明らかとなって来た。また、隣接金属を用いることでPdの磁性が制御できることの新しい知見が得られており、大きく研究が進んだ。また、Pdの量子井戸が近接磁性金属の異方性を変化させることが実験的に示されているが、その詳細に関しては現在まで第一原理計算から十分に明らかにされていない。 Ptに関しては、Pdと同様に量子井戸に起因して強磁性を発現することが明らかとなり、放射光を用いた実験と第一原理計算を行うことで、その詳細の理解が進んだ。スピン軌道相互作用が大きなPtの強磁性に期待された大きな磁気異方性については、放射光実験から軌道モーメントの寄与が小さいことが明らかとなり、その実現が困難であることが分かった。一方、Ptを用いたFeなどの隣接強磁性金属の磁気異方性制御に関しては、MBE装置の故障のために当初の予想より進捗が遅れている。 総合的に見て、研究は概ね順調に進んでいると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
Pd超薄膜に関しては、その磁性の本質に関する知見はほぼ得られているが、実験的には、隣接磁性金属の磁気異方性を変化させることに成功しているが、その詳細について理論的な理解が不十分な部分がある。隣接磁性金属の磁気異方性変調が実験的に明らかになるとともに、電気的にPd中の量子井戸状態を電気的に変調することにも成功していることにから、この知見を基に、隣接磁性金属の磁気異方性を電気的に制御することを目指したい。 Pt超薄膜に関しては、量子井戸状態に起因した強磁性の発現は実験的に明らかとなっているが、第一原理計算と一致しない部分が残されている。第一原理計算の検討をさらに進めて、実験結果を十分に説明できる理論的解釈の確立を目指したい。さらに、(100)配向を持つFeとPtの多層膜を用いて、磁気異方性をPt層の量子井戸状態を用いて変調させることを目指していたが、MBE装置の不調のために実験が滞っている。この状況を改善して実験を進める。
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Causes of Carryover |
年度末に装置の故障により実験が止まったため、予定額を使用することができなかった。
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Research Products
(3 results)