2021 Fiscal Year Research-status Report
Structure and function of water confined in hetero-nano space
Project/Area Number |
19K05200
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
本間 芳和 東京理科大学, 理学部第一部物理学科, 教授 (30385512)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
由井 宏治 東京理科大学, 理学部第一部化学科, 教授 (20313017)
浦島 周平 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 助教 (30733224)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 構造水 / 親水性 / 疎水性 / カーボンナノチューブ / 石英 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、単層カーボンナノチューブ(CNT)に内包された水分子およびグラフェンとシリカの界面にインターカレートされた水分子を対象に、分子動力学計算(MD)による構造解析を行った。CNTの内包水はCNTの壁面と水分子自身のポテンシャルに束縛された構造水であり、特異なヘテロ界面水とみなせる。MDの結果、内包水は完全な無秩序相(液相)とも秩序相(固相)でもない両相の混合状態で、それぞれがnmサイズのドメインを形成し、温度によって液相と固相の割合が変化することが明らかになった。グラフェン/シリカ界面の水については、グラフェン/グラフェン界面の構造水と比較しながら解析を進めている段階である。 実験的には、極性および非極性材料と空気との界面に吸着した水について、ヘテロダイン検出振動和周波(HD-VSFG)分光法による構造解析を試みた。非極性材料としては高配向性熱分解グラファイト(HOPG)を用いた。前年(2020)度時点で、表面に存在するサブミリ~ミリメートルオーダーの皺や傷が測定上の課題となっていたため、HOPGの転写と加圧によって表面凹凸そのものを軽減させることを新たに試みた。これにより、表面に皺は残存するものの、平坦領域が100 μmスケールまで拡大された。そこでこれに対し従来の非同軸HD-VSFG分光を適用したところ、吸着水由来と思われる信号が観測された。このことは非極性かつ平坦なグラファイト表面にも大気圧下で水が吸着することを示唆している。 一方極性材料としては、表面水酸基密度やバルク組成を変化させることで表面の化学組成を制御した種々のシリケートガラスを用いた。これにより、ガラスのわずかな組成変化が急激な吸着構造変化をもたらす濃度領域が存在することを突き止めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
グラフェン/シリカ界面の水に関するMDシミュレーションでは、東京理科大学のウォーターフロンティアサイエンス研究センターで開発中の「水の統合シミュレータ」を利用しており、シミュレータに入れるポテンシャルや物性パラメータ等を改善するのに時間を要している。 HD-VSFGによる非極性材料の解析については、HOPGの平坦性を改善することで吸着水由来と思われる信号が観測されたものの、未だスペクトルの再現性は低い。このことの理由として、HOPG表面の皺を完全に除去できていないため、入射レーザーの集光径(~100 μm)内に部分的に皺がかかってしまい、その度合いが測定ごとにバラついていることが考えられる。しかし、柔らかく剥がれやすいHOPG表面の皺を現在よりもさらに軽減することは困難であった。これまでの検討で、化学気相蒸着(CVD)やスコッチテープ法で作成したグラフェンも含めて様々なグラファイト材料表面にHD-VSFG分光法を適用してきたが、そのどれもに技術的な課題が残される形となった。 一方、極性材料では、親水(ガラス)-疎水(空気)ヘテロナノ界面における水構造と表面化学状態との関連が明らかになりつつあり、この成果は現在論文投稿準備中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
CNT内包水については、その特異な相の分子的描像が明らかになったので、論文化を進める。グラフェン/シリカ界面の水のMDシミュレータに関しては、グラフェン/グラフェン界面の構造水と比較しながら、水素結合ネットワークの秩序性およびその温度変化に着目して解析を進め、ヘテロナノ界面に特徴的な物性を明らかにする。 炭素材料表面の計測には試料作製面での技術的な課題が多く残されているため、ひとつひとつ課題を克服しつつ、HD-VSFG測定では、比較的順調な親水性材料の表面吸着水構造を計測・解析を引き続き進める。特に、界面に束縛された水の振る舞いを考察するうえで、その相転移に関する理解は欠かせない。疎水性表面における吸着水は室温から140 Kまでの範囲で相転移を起こさないことが既に知られているが、これは水素結合ネットワークによって結晶構造を形作るには水分子数が限定されすぎているためと考えられる。一方で親水性表面の場合は、材料の表面水酸基を水素結合ネットワークに巻き込むことによって少ない水分子数でも秩序立った氷構造を組み上げる可能性がある。そこで、温度の制御が可能な計測セルを新たに製作し、吸着水の構造相転移をHD-VSFG分光により追跡する。なお、この測定は既に確立済みの技術の組み合わせで実現でき、また水-氷の相転移はHD-VSFGスペクトルから容易に判断できる。
|
Causes of Carryover |
参加を予定していた国内学会や国際会議がオンライン開催となったため、旅費を計画どおり使用できなかった。 研究計画の遅れもあり、計画を2022年度に延長した。 2022年度は、繰り越した研究費を消耗品等の購入に充てて研究を継続するとともに、成果を国内外の学会で発表する。
|
Research Products
(6 results)