2020 Fiscal Year Research-status Report
剥離と化学修飾のワンポット連続反応による高品質化学修飾グラフェンの創製
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19K05202
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
沖本 治哉 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 助教 (20510168)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | グラフェン / ナノカーボン / 剥離 / 化学修飾 / ワンポット反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では従来の酸化反応を利用した化学修飾グラフェンの作製ではない方法でのグラファイト剥離と化学修飾反応を同時に達成することを目的とする。またこれらの同時反応がどのようなメカニズムによって達成されているかを明らかにすることで、化学修飾グラフェンの層数や修飾量を自在に制御可能な合成法の確率を目指している。 2020年度は、グラファイトを原料としたグラファイト剥離/化学修飾のワンポット反応による化学修飾グラフェンの作製を試みた。グラファイトの剥離には必ずインターカレーションが伴うことから剥離に必要な官能基と化学修飾が起こりやすい官能基を併せ持った分子によるワンポット反応を試みたが、修飾量・剥離量ともに少ない結果となった。原因として分子サイズが大きくなるためグラファイト層間への挿入が十分に起こらなかったと考えられた。そこで剥離剤と修飾剤を別々にすることで分子サイズの問題を解決した。具体的には修飾剤としてアミン系分子、剥離剤として硫酸系/硝酸系分子と2つに分けたところ劇的に化学修飾量と剥離量が上昇し、また剥離した化学修飾グラフェンの膜厚も数nmの薄いものが多く得られた。また反応溶媒に水を添加すると水の電気分解が活発に起こり、グラフェンの剥離量がより増加することがわかった。一方で、水の電気分解によるグラファイト剥離を利用することで剥離速度が電位によって大きく影響されるため、剥離後の化学修飾グラフェンの層数や修飾量は電位によってかなり依存する傾向がみられた。 最終的に2020年度では、従来の酸化反応を利用しない剥離と化学修飾のワンポット反応による化学修飾グラフェンの合成法を開発し、種々の条件におけるグラフェンの層数や化学修飾量との相関を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は主にグラファイトを原料として化学修飾とグラフェン剥離を共存させる方法を開発した。おおよそ計画通り、修飾剤としてアミン系分子、剥離剤として硫酸系・硝酸系分子をもちいて剥離/化学修飾のワンポット反応による化学修飾グラフェンの作製をおこなった。おおよそ想定通りの結果で、剥離剤の種類及び修飾剤の分子サイズやアミン級数などが化学修飾グラフェンの修飾量・層数に大きく影響することが分かった。また新しい知見としては反応溶媒では有機反応を用いるため有機溶媒単体で使用するよりも剥離剤・修飾剤の両方に合わせた混合溶媒を使用した方が良いことが分かった。一方で新たな課題として印加電位が作製した化学修飾グラフェンの層数や修飾量に大きく影響することが分かったため、2021年度ではこれの対策として前処理の検討を始める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、①層数と修飾量の制御を自在に行なうことと②他の官能基末端を持つ化学修飾グラフェンの合成を目指す。層数と修飾量の制御については、印加電位の影響が強いワンポット反応時の制御ではなく、グラファイト原料の前処理として初年度におこなったグラファイト層間化合物の利用やその他前処理を検討する。またこれまではジアミン系分子を使うことで末端アミン基を持つ化学修飾グラフェンのみを作製したが他の末端官能基の化学修飾グラフェンへの応用も検討する。特にクリック反応に利用可能なアルキンやチオールの導入を試みる。おおよそ化学修飾グラフェンの作製に関する基礎的な知見は得られており、物性測定に必要な量の合成も可能なため、従来の方法(酸化グラフェンを経由して化学修飾グラフェンを作製する方法)とワンポット合成した化学修飾グラフェンの物性や化学的性質の違いについても明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度経費が生じた主な理由は、昨年度の春学会での旅費がほぼ不使用になったのと同様にコロナの影響により国内旅費と外国旅費のほとんどを利用できなかったためである。今年度は最終年度であることとコロナの影響は今年度内に終息する可能性は低いことから、可能な限り物品費として利用していく予定である。特に2020年度の研究成果は本研究課題の核となる部分を確立することができたことから2021年度は他の官能基末端の修飾や原料となるグラファイトの購入費が必要なため、これらの原資に充てる予定である。
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