2019 Fiscal Year Research-status Report
Study on photothermal conversion dynamics by means of femtosecond transient absorption imaging microspectroscopy
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19K05211
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
石橋 千英 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (10506447)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 顕微過渡吸収分光 / 過渡吸収イメージング / 光ー熱変換過程 / 有機ナノ粒子・ロッド |
Outline of Annual Research Achievements |
有機固体は、電子・正孔移動、光エネルギー移動に加えて、高光子密度の光照射により複数の励起分子が同時に励起され、隣接励起分子間の相互作用により新たな光物性を示したり、迅速な無輻射遷移過程により熱が放出され、一瞬で局所的に温度が上昇したりする。本研究では、このような「電子・正孔、光エネルギーや熱が結晶中でどこまで伝播するのか、また結晶の形状(屈曲や湾曲の度合いなど)が伝播速度にどのような影響を与えるのか」をフェムト秒顕微過渡吸収分光法による3次元イメージング解析により詳細に解明する。 2019年度ではナノメートルからマイクロメートルサイズの単一有機結晶における光化学反応のメカニズムやダイナミクスに対して、過渡吸収イメージング解析が可能なフェムト秒時間分解顕微分光装置の構築を試みた。まずは申請者が所有している単一ナノ結晶の励起状態緩和ダイナミクスを調べることが可能なフェムト秒ポンプープローブ光散乱顕微分光システム(時間分解能350 fs、励起波長390-400nm、観測波長500-800 nm)に高精度のピエゾステージを導入し、XYZ軸方向にステージ制御することで3次元のイメージング解析を行えるようにプログラミングした。次に装置の性能評価のためにガラス基板上に単分散した単一金ナノ粒子(10、40、100nm)を測定した。XY面での過渡吸収イメージングの断面プロファイルからXY平面での空間分解能を見積もったところ10nmの金ナノ粒子では190 nmとなった。これはプローブ光(あるいは励起光)の回折限界から見積もられる値よりも小さい。このことはポンプ光とプローブ光が空間的に重なっている部分でのみ過渡信号が得られる過渡吸収測定の利点であることがわかった。つまり、本研究課題の第一段階であるフェムト秒顕微過渡吸収分光法による3次元イメージング解析が可能なシステムの構築ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度ではナノメートルからマイクロメートルサイズの単一有機結晶における光化学反応のメカニズムやダイナミクスに対して、過渡吸収イメージング解析が可能なフェムト秒時間分解顕微分光装置の構築することである。申請者は、当初の計画通りに、高精度のXYZピエゾステージを組み込んだフェムト秒ポンプープローブ光散乱顕微イメージング分光システム(時間分解能350 fs、空間分解能200 nm、励起波長390-400nm、観測波長500-800 nm)を構築しすることができている。実際に有機ナノ結晶の凝集体のイメージング計測もすでに試みており、一部の結果は国内学会および国際会議にて発表をしている。以上のことから、本研究課題は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の方策として、実際の光ー熱変換ダイナミクスの測定を試みる。まずは当研究室で液中レーザーアブレーション法により作製が可能な銅フタロシアニンのナノワイヤー(CuPc-NW)をを測定対象とし、ガラス基板上に分散したCuPc-NWの励起状態緩和ダイナミクスに対する励起光強度依存性を行う。特に前年度に購入した卓上原子間力顕微鏡により粒子の形状(結晶の湾曲度合い)を把握し、励起位置を変えることで、結晶の湾曲度合いによって、励起エネルギーがどのよう な時間スケールで伝搬するのか、どれくらいまで広がるのかを明らかにする。一方で、レーザー過渡加熱効果を利用した光反応(SFやフォトクロミズム)促進過程の一般化過渡加熱現象と光反応を組み合わせて、優位な光反応の促進現象の観測を試みる。試料には、SFを示すペンタセンや ジフェニルイソベンゾフラン誘導体などを用いる。最低励起状態の最低振動準位よりも高い振動準位を選択励起し、三重項状態の生成量や生成速度の励起光強度依存性を調べ、その結果をもとに過渡加熱の効果を議論する。
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Causes of Carryover |
2019年度において、予定していた学会などへの出張は行なっており、購入予定の物品は予定通り購入できている。しかし、主たる物品費である原子間力顕微鏡の購入費用が安く抑えられた上に、光検出器も予想よりも低く購入ができた。そのために当該助成金が生じている。この当該助成金は、次年度の研究計画で使用する予定である。次年度の計画の中心は、構築したシステムを利用して実際に実験データを取得し、その解析を行うことである。そこで、システムの保守のための光学部品や実験に使用する試薬購入などの消耗品費に充てたり、初年度に得られた成果報告を行うために必要な諸費用に、当該助成金を充てたりする予定である。
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Research Products
(17 results)