2020 Fiscal Year Research-status Report
異分野理論の融合による磁性ナノ粒子の誘導加熱理論の確立と新規合成プロセスの開発
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19K05216
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
岩崎 智宏 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50295721)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 磁性ナノ粒子 / 誘導加熱 / 磁気ハイパーサーミア / フェライト |
Outline of Annual Research Achievements |
がん温熱療法(磁気ハイパーサーミア)は患者の身体的・精神的・経済的負担を小さくできるため実用化が期待されている。そのためには発熱体である磁性ナノ粒子の誘導加熱を制御する因子を明らかにする新しい理論の確立とともに、最適な物性・特性をもつ磁性ナノ粒子を設計し、これを的確に合成する新規プロセスの構築を行わなければならない。理論の確立では従来の理論で問題とされてきたナノ粒子の粒子径分布の考慮だけでなく、異分野の理論、とくに結晶学などの知見を融合する必要がある。さらに、新しい理論に基づいて設計した最適な磁性ナノ粒子を合成する手法として、誘導加熱の主要な支配因子の一つである、ナノ粒子内の結晶構造に対して直接的な変化をもたらすことが可能な機械的エネルギーを利用するメカノケミカル処理を採用した新規プロセスが有望である。2020年度では、磁性ナノ粒子の誘導加熱特性と理論的に合致する、正確な結晶子径分布をX線回折データより決定する手法を確立することを目的に、試料のX線回折パターンのピーク分離およびノイズ除去を適切に行い、結晶子径分布を決定した。得られた結晶子径分布は、透過型電子顕微鏡で実測した粒子径分布とほぼ一致したことから、この試料は単結晶ナノ粒子であることが確認された。結晶子径分布をRosensweigの発熱理論に組み込み、交流磁場の条件を用いて発熱量を推算したところ、実測値と良好に一致し、誘導加熱の理論的推算に有効な結晶子径分布を決定する手法が確立できた。一方、磁性ナノ粒子の結晶子径分布制御を目的に、そのメカノケミカル合成プロセスの反応速度の動力学的解析を行ったところ、出発原料粉体の結晶性が反応速度に影響を与える場合が確認され、次年度に実施予定の生成物物性制御への足がかりが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に基づいて種々の実験を行い、得られたデータを丁寧に解析した結果、磁性ナノ粒子の誘導加熱を記述する新たな理論の構築において重要な因子である、結晶子径分布の決定法が確立でき、さらにメカノケミカルプロセスによる物性制御の可能性が見いだされ、次年度以降の研究につながる成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、従来理論を修正するためのアイデアを異分野から取り入れ、並行して種々の磁性ナノ粒子を合成し、その誘導加熱特性と各種物性との関連性を詳細に検討する。また、試料の磁気特性を微妙に変化させるために、レアアースを含む成分をフェライトに微量添加する検討も着手し、結晶構造や磁気特性が誘導加熱に及ぼす影響を検討する。
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