2022 Fiscal Year Annual Research Report
異分野理論の融合による磁性ナノ粒子の誘導加熱理論の確立と新規合成プロセスの開発
Project/Area Number |
19K05216
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
岩崎 智宏 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (50295721)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 磁性ナノ粒子 / 誘導加熱 / 磁気ハイパーサーミア / フェライト |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度では、主として磁性ナノ粒子凝集体のメカノケミカル合成プロセスの構築について重点的に検討を行った。塩化第一鉄四水和物と尿素を共粉砕(メカノケミカル処理)することにより、複合酸化鉄ナノ粒子凝集体を合成することができ、磁気特性の測定結果より、優れた誘導加熱特性が期待できることがわかった。研究期間全体では、マグネシウム亜鉛フェライトを磁性材料のモデルとして用い、種々の結晶子径分布をもつナノ粒子試料の充填層に対して、結晶子径が誘導加熱に及ぼす影響を詳細に検討した。その結果、フェライトナノ粒子の発熱量は多くの場合理論値と一致したが、結晶子径に対して異なる傾向を示す場合も見られ、従来の発熱理論において修正すべき点が明確となった。また、ナノ粒子が凝集することにより、誘導加熱メカニズムの重要因子である緩和機構が変化し、発熱量が大きく変化することが実験的に確認できた。ナノ粒子の凝集状態、すなわち凝集体の粒子径分布を誘導加熱のモデル式に考慮することで、発熱量を概ね予測することに成功した。一方、遊星ボールミルを反応装置としたメカノケミカルプロセスで磁性ナノ粒子を合成した際、装置の運転条件によって反応成分の反応速度および生成物物性が変化することを確認し、離散要素シミュレーションを用いて合成プロセスの動力学解析を行った結果、ボールの法線方向の衝突エネルギーが反応の進行に対する支配的な因子であることを見いだした。さらに、磁性ナノ粒子に対して極少量のレアアース置換を行うことで、磁気的特性が微妙に変化し、誘導加熱が大きく変化した。以上より、一次粒子の粒子径分布、凝集体の粒子径分布(凝集構造)、一次粒子内の結晶子径の分布の考慮、およびこれらに起因する磁気特性の変化が最重要であることを明らかにし、メカノケミカルプロセスが誘導加熱用の磁性ナノ粒子の合成に適していることを示した。
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Research Products
(2 results)