2019 Fiscal Year Research-status Report
タンニン酸-PEG複合体の形状・サイズ制御法の確立とワクチンへの応用
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19K05217
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
新倉 謙一 日本工業大学, 基幹工学部, 教授 (40360896)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | タンニン酸 / アガロース |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノ粒子をワクチンとして利用する際に、その形状やサイズの重要性が明らかになってきたが、生体適合性の高い有機分子での形状・サイズ効果の検証・応用は十分ではない。本研究ではまず、形状や大きさを制御したタンニン酸-ポリエチレングリコール(PEG)複合体ナノ粒子の作製を進めた。その試行のなかで偶然にも多糖であるアガロースとタンニン酸が複合体を形成することを見いだした。アガロースは寒天の成分でもあり、生体への適合性も高いと考えられる有機分子である。この発見を機に別の多糖とタンニン酸との相互作用も調べた。アガロース以外の多糖として、イヌリン、デキストラン、コンドロイチン硫酸などを試したが、アガロースとの混合溶液は白濁がみられなかった。アガロースだけが白濁し、複合体を与えた。アガロースは通常、試みた濃度においてゲルを形成するが、タンニン酸が共存することでゲルではなく懸濁液となっていることより、アガロース同士の相互作用をタンニン酸が阻害していることが示唆された。タンニン酸とアガロースの懸濁液を動的光散乱法により測定した結果、粒径約200 nmであった。この粒径は24時間ほぼ変化することがなかった。pHの効果としてpH5とpH7.4を比較したところ、pH5のほうが水素結合能が上がるために低濃度で複合体を形成することを確認できた。しかし、その後大きな凝集体に成長するまでの速度が速く、長期の安定性という意味では、高濃度ではあるがpH7.4のほうが複合体形成に適していることが分かった。これらの成果は2019年に開催されたコロイド・界面関連の国際学会において発表した。今後はこの複合体に抗原タンパク質がどの程度結合しうるのかを定量していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アガロースとタンニン酸が複合体を形成するという、当初の予定していたPEGとタンニン酸複合体を超える新規性のあるものを見いだすことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の目的ではタンニン酸/PEG複合体を中心に考えていたが、今後はそれらに加え、タンニン酸/アガロース複合体に関しても形状評価、抗原タンパク質モデルの吸着挙動の定量、細胞内導入効率の評価などを進めていきたい。タンパク質抗原としては蛍光修飾タンパク質を利用する予定であり、タンパク質を固定化後の精製方法についても目処がつけてある。形状とサイズに関しては、使用する高分子の分子量を変えることで制御していく。
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Causes of Carryover |
年度末に参加予定していた国内学会が急遽、コロナ感染防止のため中止になり、繰り越しが発生した。この予算については、機会をみて国際学会で発表するために使用する。
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