2021 Fiscal Year Research-status Report
SHレーリー散乱法による一次元配列した金ナノ微粒子の四極子プラズモンモードの観測
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19K05224
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
宮内 良広 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 准教授 (70467124)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 真也 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (00377095)
島田 透 弘前大学, 教育学部, 准教授 (40450283)
梅村 泰史 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 教授 (70531771)
平田 靖透 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 助教 (50750692)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光第二高調波発生 / 球形金ナノ微粒子 / 局在プラズモン / 電気四重極子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では金ナノ微粒子で起こる光第二高調波の散乱(SHレーリー散乱)が金ナノ微粒子の局在表面プラズモンの電気四極子に敏感に応答するという原理に着目し、またガラス基板内に一次元配列した金ナノ微粒子の個数や微粒子間隔等を精密に制御することにより、それらによって変調する一次元配列構造の電気四極子共鳴状態をこのSHレーリー散乱法を用いて解明を行うことを目的としてる。 本年度は光第二高調波発生(SHG)顕微分光計測の自動化を推進した。SHGスペクトルの観測を行うためには各波長においてレーザーパワーとフォーカスを調整し、分光器の波長を調整した後にSH信号を計測する必要がある。特にフォーカスの調整ではこれまでSH信号の値を目視しながら、最大となるように対物レンズに対する試料の高さを手動で調整していたのであるが、この調整は労力がかかり、また人為的なエラーが発生する可能性もあった。今回、試料高さを変えながらSH信号を取得し、そのSH信号の積分値を各波長の信号値として採用するという方法に切り替えた。このことによって、より正確で簡易的にSHGスペクトルが取得できるようになった。同様に入射偏光角依存性の自動計測化も行った。 また、粒径100, 200 nmの球形金ナノ微粒子を入れて一次元的に配列させるためのガラス基板溝構造の設計と作成を行った。広さ~20x20 cm2のガラス基板を100x100 μm2の1万個程度のユニットとして区切り、さらに各ユニット内において、10 μm離しながら同一形状の微細な溝構造を64個作成した。この際、ユニット毎に異なる長さの一次元的な微粒子配列が作成できるように、溝構造の長さをユニット毎に変化させた。この溝構造はガラス基板にスピンコートで塗布したレジストに電子線を露光した後、アルカリ溶液を用いて現像し、フッ化塩素によってエッチングを行って作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度もコロナ禍によって東京大学での電子線装置の使用が延期されたことや研究以外の業務の対応に時間を費やしたことやなどが影響し、研究に遅れが生じた。 また、昨年度から金微粒子の間隔調整のために金ナノ微粒子のオクタンチオール修飾の調合条件を調べてきたが、作成した試料はオクタンチオールと金微粒子が複合的に凝集しており、これを遠心分離法によって分離することが出来ないことが明らかとなった。恐らく購入した金微粒子表面が不明な材料で覆われており、これによって理想的なアルカンチオールの修飾が出来なかったことが考えられる。今後の方針としては、金微粒子のアルカンチオール修飾については、修飾された金ナノ微粒子が最近販売されたためこれを購入する。LB法を用いてこの修飾された金微粒子の単分子膜作成し、これを溝構造のあるガラス基板に転写して、一次元構造を作成する。なお、金微粒子の間隔調整についてはガラス基板の溝構造の長さにバリエーションを持たせることによっても対応する。例えば、粒径100 nm金ナノ微粒子を4個一列配列させる場合、最適な長さである長さ400 nmの溝構造があるユニットだけではなく、ここから±25 nmの長さに違いがある溝構造があるユニットも作成した。これらに微粒子を入れた場合、4個の微粒子が余裕をもって入るユニットや逆に密となるユニットが存在することとなり、数10nmオーダーの微粒子間隔の制御が可能となると予測している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度作成した溝構造のあるガラス基板にLB法で作成した金微粒子単分子膜を転写することによって溝に球形金ナノ微粒子を流し込み、微粒子の一次元配列構造を作成する。次にこれを原子間力顕微鏡などによって観測し、詳細な配列構造を明らかにする。次に線形反射差分分光計測を行い、微粒子の共鳴周波数を調べ、最後にこの微粒子のSHGスペクトルを観測する。線形、非線形の共鳴周波数に違いが生じた場合、この原因をFDTD計算によって明らかにする。 これまで行ってきた予備計測やFDTD計算結果から線形、非線形の共鳴周波数に違いがあるならば、2種類の原因があると予想される。一つは線形分光では観測されにくい局在表面プラズモンの多重極子にSHレーリー散乱が敏感であることに由来する。配列した金微粒子間においてその多重極子同士の相互作用が起きていることが既に報告されているが、SHG法はこの相互作用している多極子の直接観察ができると考えられる。その場合、配列した金微微粒子列の端ではなく中央付近で強いSH信号が得られると予想される。 また、金微粒子配列が基板垂直方向に凹凸構造がある場合、入射光が斜入射するとOblique 形の双極子相互作用が起きる可能性があることがFDTD計算によって分かっている。一方、球形金ナノ微粒子からのSHレーリー散乱は基本光が基板に垂直入射した場合、禁制となる。それ故、顕微法を用いると対物レンズによって集光する際に斜入射した基本光のみがSHレーリー散乱を励起する。このことからSHレーリー散乱を用いるとこのユニークな双極子相互作用の観測が可能となると予想される。 本年度はこのようなSHレーリー散乱の特徴を生かし、線形分光で観測されないプラズモンモードの観測を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響によって研究に遅れが生じている。それ故、本研究を1年延期したため、次年度使用額が生じた。使用計画としては主に金微粒子などの消耗品費につかい、残りは得られた研究成果の学会発表や論文発表のための経費として利用する。
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