2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of highly-biocompatible super-resolution imaging based on fluorescence polarization and fluctuation
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19K05226
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
和沢 鉄一 大阪大学, 産業科学研究所, 特任准教授 (80359851)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光スイッチング蛍光タンパク質 / 超解像イメージング / キュムラント / 蛍光変調 / 多重平衡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、超解像イメージング法であるSPoD-OnPAN(super-resolution polarization demodulation/on-state polarization angle narrowing)において、弱い照明光を用いた低光毒性・高生体適合性を維持しながらも、忠実性の高い超解像画像を得るためのイメージング手法の開発を目指している。このために、蛍光強度揺らぎの統計計算をSPoD-OnSPANに組み込んだ超解像イメージング法の開発を進めている。本年度は、SPoD-OnSPANの照明法に対する蛍光タンパク質の蛍光応答性およびその高次キュムラントのモデル計算、そしてSPoD-OnSPAN観察に適した蛍光タンパク質の開発を行った。SPoD-OnSPANの照明法で励起した蛍光タンパク質からの蛍光強度変調における高次キュムラントの解析解によれば、偶数次キュムラントは非ゼロに、奇数次キュムラントはゼロになることがわかった。これより、4~8次の偶数次キュムラント画像をとるのが現実的であることが分かった。また、SPoD-OnSPANで従来用いられてきた光スイッチング蛍光タンパク質Kohinoorを試験管内分子進化手法で改良したKohinoor2.0を開発した。これは従来のKohinoorに比べて2.6倍の蛍光強度を示し、光安定性等はKohinoorと同等の特性を示す。Kohinoor2.0の吸光スペクトルのpH依存性の解析により、その蛍光強度の改善はプロトンが解離した陰イオン性発色団の安定化によるものであることが明らかになった。Kohinoor2.0によって、延べ数100秒以上の長時間超解像イメージング、そして0.5秒のフレームレートによる高時間分解能での高速超解像イメージングを実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、蛍光強度揺らぎの統計解析による超解像画像再構成計算を組み込んだSPoD-OnSPAN超解像イメージング手法の開発を行っている。これまでの経緯としては、まずSPoD-OnSPAN顕微鏡装置を製作し、細胞の超解像観察実験系を用意した。SPoD-OnSPAN観察のための蛍光プローブとして、蛍光が明るく、弱いスイッチング光で動作可能な光スイッチング蛍光タンパク質の開発に成功し、これを用いて長時間および高速超解像イメージングが可能であることを確認した。当該イメージング手法の理論的な基盤を確立するために、蛍光強度揺らぎの高次キュムラントによる超解像画像取得のfeasibilityを検討し、マルコフ過程を用いたモデル計算に基づいてカメラの画素がカバーする蛍光タンパク質分子数と蛍光・明暗状態のキネティクスの再構成画像に対する影響を評価する手順を確立した。さらに、蛍光タンパク質の存在密度が高い蛍光試料に対応する手段として、SPoD-OnSPANの励起光照明によって発生させた蛍光変調より、非ゼロ高次キュムラントを得ることが可能であり、超解像画像再構成計算に有用であることを確認した。ただし、本手法を細胞イメージングで検討するまでに至っておらず、研究の進捗に若干の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、蛍光偏光と蛍光強度揺らぎに基づく高生体適合性超解像イメージングに向けて、観察手法の最適化、細胞の超解像観察、そして2色超解像イメージングによる蛍光比イメージングを行う。観察手法の最適化においては、SPoD-OnSPANの励起光照明法と蛍光物体から発生する蛍光変調の関係を解析することで、超解像画像の空間分解能、忠実性、そしてコントラストを最適化するための条件検討を行う。さらに、この条件検討で得られた結果を用いて、細胞の超解像イメージング実験を試行し、その結果を観察条件の最適化にフィードバックする。このように、理論と実験双方の検討を経て、細胞の超解像イメージングに適した観察条件を得る。さらに、2つの蛍光タンパク質から構成され、2波長の蛍光比からイオンや温度等の計測が可能な蛍光タンパク質ベースの指示薬を用いて、細胞内分布を高空間分解能で観察するための手法開発を行う。現状では、光スイッチング蛍光タンパク質で構成される細胞生理指示薬は作製が難しいため、2色イメージングでは光スイッチングを利用しないSPoDイメージングに基づく手法を検討する。
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Causes of Carryover |
今年度の研究計画では、細胞試料を用いた超解像イメージング実験を実施することとしていた。しかし、蛍光変調による高次キュムラント画像のシミュレーションとその考察に当初の予想以上に時間が掛かったため、細胞試料の観察実験が予定通りに進まなかった。以上の経緯により、細胞試料の超解像イメージングを次年度に行うこととしたため、次年度使用額が生じた。これについては、次年度に実施する細胞イメージング実験に係る経費として執行する。
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