2019 Fiscal Year Research-status Report
Modification of neuronal function using push-pull system
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19K05227
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
河西 奈保子 首都大学東京, 大学教育センター, 教授 (50393749)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内山 一美 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (40151899)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プッシュプルシステム / 微小溶液 / 細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,プッシュプルシステムにより局所的に投与された薬物により,神経細胞の成長や機能の改変を行う.2019年度は1)細胞の安定計測と 2)実験系の立上げの2つに関して平行して進めた.以下にそれぞれについて説明する. 1)神経細胞の培養は,細胞の安定的な供給や培養環境の最適化に労力や時間がかかることから,まずは継代培養を比較的容易に行うことができるがん細胞を用いることで,細胞の安定計測を行うことが可能となった.ここでは,プッシュプルシステムの機能の一部を用い,数十個の細胞群を対象にして,細胞から放出される化学物質を計測した.細胞のごく近傍にプッシュプルシステムのノズルの先端を設置して溶液を静かに吸引し,ノズル内に組み込んだ電極を用いて電気化学的に物質を検出した.細胞へグルコースによる刺激を印加した際,細胞から放出される乳酸を計測したところ,細胞の数に応じた異なる乳酸量変化を検出することに成功した.がん細胞は代謝活性が高いことから,正常細胞に比べて乳酸の放出量が多い.本技術を用いることで,数十個レベルでがん細胞を識別することが可能となった. 2)上記計測は電気化学検出によるものであったが,細胞形態や機能計測のためには,蛍光による観察系が必要である.ここでは,細胞を観察しながらプッシュプルシステムのノズルをマニピュレータを用いて細胞にアプローチし,同時に細胞の応答を蛍光により計測できるよう倒立型蛍光顕微鏡システムを構築した.通常の倒立型顕微鏡では,ステージ上部に設置された鏡筒と,プッシュプルシステムのノズルが干渉するため,十分に空間が取れるようなステージ配置およびマニピュレータやアダプタを選定することで実現した.これによりステージに設置した培養細胞に効率よくノズルをアプローチし,蛍光による観察が可能になった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プッシュプルシステムの基本の形態であるノズルシステムを用いて細胞にアプローチすることに成功したことが大きな理由である.細胞に対してノズルを精度よく近づけることは頻繁に行われているものの,実際には慣れと技術が必要である.速やかに行わなければ,細胞の状態を安定的に保持することが困難になり,実験の誤差が拡大する.今回の取組みにより,安定的に精度よく細胞計測が可能となった. 一方,蛍光での計測ができるような倒立顕微鏡システムを立ち上げたことで,今後,生体計測では最も一般的な蛍光測定を元にした研究の発展が期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、前述した目的を達成するため、2020年度は以下のとおり計画を進める. 1)プッシュプルシステムの最適化: 吐出された薬物を外部に拡散させずに速やかに吸引し,局所にのみ刺激を印加するためのプローブ形状やサイズ,細胞との位置関係,吐出速度,吸引速度,薬物の濃度,刺激の時間について最適化を図る.吐出する薬物として蛍光プローブを含む脂質分子を用いることで,細胞膜に取り込まれて拡散する蛍光分子と,溶液中に吐出され拡散する蛍光分子の挙動を比較することで上記検討を進める. 2)神経細胞の安定培養: 初代神経細胞は現環境下では培養技術の構築に時間がかかると判断し,その代替として神経幹細胞あるいは神経芽細胞が適しているかどうかを検討する. 以上の検討により得られた結果を基にし,神経科学学会・応用物理学会・生物物理学会等の関連する国内外の会議にて発表し、また特許、論文化を進める.
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Causes of Carryover |
研究進捗は順調であったが,コロナ感染拡大に伴い年度末に納品予定であった消耗品の納品が遅れた.翌年度に繰り越して購入する予定である.
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Research Products
(33 results)