2020 Fiscal Year Research-status Report
Modification of neuronal function using push-pull system
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19K05227
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
河西 奈保子 東京都立大学, 大学教育センター, 教授 (50393749)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内山 一美 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (40151899) [Withdrawn]
毛 思鋒 東京都立大学, 都市環境学部, 助教 (40885315)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プッシュプルシステム / 微小溶液 / 細胞 / 神経成長因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,プッシュプルシステムを用いて局所的に投与された薬物により,神経細胞の成長や機能の改変を行う.2020年度は1)プッシュプルシステムにより単一細胞から放出される物質の計測と 2)プッシュプルシステムによる単一細胞操作 の2つを平行して進めた.これらの技術は,非侵襲的に単一細胞レベルでのガンの極早期診断と治療,ドラッグスクリーニング,細胞検査によるテイラーメード医療への展開が期待されるとともに,本テーマである細胞の局所操作を目指した基礎技術であり,単一細胞操作と細胞内操作の新しいツールになると期待される.以下にそれぞれの概要を説明する. 1)プッシュプルシステムの安定動作を目的とし,単一がん細胞から放出される乳酸の安定計測を行うことに成功した.単一細胞レベルでの異常(すなわち乳酸放出増加)の発見は極早期診断を可能とする.本研究では,プッシュプル型の溶液制御システムを用いて単一細胞の応答をリアルタイムに検出する新規手法開発に成功した.プッシュノズルを用いることで単一細胞のみをグルコースにより刺激し,プルノズルを用いることでその細胞のみから分泌される乳酸の応答を検出することが可能となった.分泌された乳酸は,ノズル中で酵素反応を用いて電気化学的に高感度,高特異的,および高い時空間分解能に検出できた. 2)プッシュプルシステムを用い,単一の神経様細胞の操作を行った.まず,褐色細胞腫PC12の分化により神経様細胞を安定的に作出できるようになった.続いて,4本のノズルを用いたプッシュプルシステムを用いることで,単一細胞のみに試薬を投与することで,単一細胞を分化させることに成功した.このことは4本のプッシュプルシステムを用いることで反応溶液を局所領域のみに投与できるという技術的特徴を示すものであり,様々な単一細胞操作が可能であることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プッシュプルシステムを安定的に作成・動作できるようになったこと,細胞の継代培養及び分化系を確立できたことが大きな要因である.プルノズル内に酵素反応系を安定して構築できたことから,高感度な電気化学センサを作製できた.さらにプッシュノズルを用いて溶液を流入し,プルノズルから吸引するという層流系を安定的に作れるようになったことも重要な進捗である. また,4本のノズルを用いた系において,安定した溶液の領域を作製することができたこともその後の研究の進展には重要な成果である.溶液の流入速度・吸引速度,細胞からの距離などのパラメータの最適化を行うことで,局所のみに神経成長因子の流入の成功につながった. 以上の進捗から,概ね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は最終年度であるため、前述した目的を達成するため、より精度の高い細胞操作を目指して以下のとおり計画を進める. 1)プッシュプルシステムの最適化: 2本のノズルシステムおよび4本のノズルシステムを用いることで,単一細胞レベルでの操作,計測ができるようになった.2021年度はより溶液範囲を小さくするために,ノズルのサイズ,細胞との距離,吐出速度,吸引速度,薬物の濃度,刺激の時間について最適化を行い精度をあげていく. 2)細胞の局所操作:吐出する薬物として細胞を染色する蛍光プローブや,蛍光色素を含む脂質分子,細胞の成長関連タンパクを用いることで,ぞれぞれ,細胞の局所染色の観察,細胞膜の局所染色とその分子の拡散挙動の観察,細胞局所領域の分化・成長を試みる.これらが難しい場合,タンパク分解酵素を流入することで,局所的に細胞損傷を起こし,細胞挙動を観察することで,局所操作を目指す. 3)外部発表:以上の検討により得られた結果を基にし,神経科学学会・応用物理学会等の関連する国内外の会議での発表、特許、論文化を行う.
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Causes of Carryover |
コロナ感染拡大により年度当初の研究活動が制限されたことから,予定よりも研究消耗品の支出が少なかった.さらに,学会がオンライン開催になったことから旅費の支出がゼロになった.以上のことから一部の研究費を次年度使用することとなった.
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Research Products
(10 results)