2020 Fiscal Year Research-status Report
アモルファスCe-Mn合金における巨大熱膨張現象の解明
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19K05239
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
雨海 有佑 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (50400065)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アモルファス合金 / 磁場中熱膨張測定 / 直流高速スパッタリング法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,アモルファスCe-Mn合金における巨大熱膨張現象の発現機構を磁性や電子物性の観点から明らかにすることを目的としている。本年度は,熱膨張と熱力学的に関連する比熱に焦点を当て,アモルファス(Ce,Y)-Mnの比熱およびアモルファスCe-Mnの磁場中比熱測定を行った。その結果,アモルファス(Ce,Y)-Mnの比熱からY濃度の増加に伴い低温比熱の山が小さくなることがわかった。この比熱の山は,Ceの近藤効果に起因すると予想していたが,4f電子を持たないYで置換したことにより比熱の山が小さくなったことから,やはり低温ではCeが原因の近藤効果があり,それに伴って熱膨張係数の温度変化も対応していることが明らかになった。また,電子比熱係数の減少も確認されたため,アモルファスCe-Mnは低温でCeが原因の近藤効果を示す物質であることがわかった。磁場中比熱では,無磁場と比較し温度依存性に大きな変化は見られなかったが,その値はわずかに大きくなった。また,低温で観測されたC/Tの増大が磁場により抑制されることがわかった。一方,高温側は磁場の影響がほとんど見られなかった。高温の巨大な熱膨張は,Mnのスピン揺らぎの温度依存に加え,Ceの磁性が関与していると考えたが,磁場に対する影響がなかった。これは,印加した磁場が5Tであったが,熱膨張に影響を与えるほどの大きさではなかったことが一つの理由として考えられる。今後,幅広い組成比または元素置換試料において磁場中比熱または熱膨張測定を行うことで明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,アモルファスCe-Mnおよび置換系の(Ce,Y)-Mnにおける磁場中の熱膨張と比熱の測定とLa置換系,Al置換系の試料作製を行った。 磁場中熱膨張及び比熱は,Quantam Design社のPPMSを用いて行った。比熱はPPMSのオプションで測定が可能であるが,熱膨張に関しては測定システムの構築が必要であったため,まず磁場中熱膨張測定システムの作成を行った。予備実験を何度か行い,作成したシステムで磁場中熱膨張が測定可能になった。今後,アモルファスCe-Mn系の熱膨張を様々な磁場,幅広い温度範囲で測定を進める。 試料作製に関してはスパッタ装置の改良により,作製時間を短くすることが可能になった。しかし,Ce高濃度に対するLa置換系試料はX線回折測定からアモルファス合金特有の幅広な回折パターンとは言い難い緩やかなピークがいくつか観測され,これはこれまでの試料に比べ局所構造が結晶(おそらくLaまたはCe単体)にかなり近いものが形成されている影響であると考えられる。一方,Al置換系はスパッタに使用するターゲット合金の作製が想像以上に難しく,ターゲット材として利用できるような状態にすることにかなり時間を費やした。Ce-Mnに対しわずかにAlを置換した試料の作製に成功し,Ce-Mnで観測されたスピングラス転移が5at%のAl置換で消失することが明らかになった。本年度は試料作製にかなり手間取り,目的としているクオリティの試料をほとんど得ることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,PPMSを用いた磁場中熱膨張測定をCe-Mnおよび置換系で進め,熱膨張への磁場の影響を明らかにし,巨大熱膨張現象の解明に迫る。 試料作製に関して進捗が良くなかったが,装置の改造の影響ではなく置換系試料は作製条件が大きく異なることが予想された。従って,スパッタ条件や組成比を見直し,直ちに置換系試料を作製し,磁性と熱膨張に関する測定を進める。 置換系の(CE,Y)-Mn系に関しては,磁性・比熱・熱膨張のデータが十分に集まったため,学会発表のみならず,論文発表に向けて準備をはじめている。
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Causes of Carryover |
当初参加予定だった日本物理学会が新型コロナウイルス感染症拡大防止のため現地開催が中止となり,旅費として使用予定の分が次年度使用額として生じた。 翌年度分との合わせた使用計画としては,関連学会への参加旅費または研究打ち合わせの旅費等に使用する予定だが,コロナウイルス感染症の状況次第では使用することが不明なため,もともと計上額が少なかった試薬に使用する予定である。
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