2020 Fiscal Year Research-status Report
磁性体/層状超伝導体複合構造におけるコヒーレントスピン依存量子現象
Project/Area Number |
19K05244
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
入江 晃亘 宇都宮大学, 工学部, 教授 (90241843)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高温超伝導体 / スピントロニクス / 固有ジョセフソン接合 / ナノ構造 / 超伝導材料・素子 / 低温物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,磁性体/固有ジョセフソン接合/磁性体構造を作製し,固有ジョセフソン接合列における層間結合と多数接合にわたる長距離結合の両観点からスピン流が固有接合特性に及ぼす影響を明らかにすること,また,スピン依存量子輸送現象の制御方法を検討し,同接合を利用した新奇なスピン機能素子応用への展開を目指すものである。 令和2年度は、超伝導層間のジョセフソン結合強さに対するスピン流の振る舞い及びスピン流による多数接合の協働現象の解明するため、Pb添加ビスマス系高温超伝導体BPSCCOでは固有ジョセフソン接合特性がPb添加量に依存して変化することに着目し、まず、BPSCCO単結晶の大型化に取り組んだ。BPSCCO単結晶はFZ法並びに自己フラックス法により作製し、Biリッチの出発原料を用い、焼成温度を調整することで、面積約4.5×7mm2程度と従来に比べ大きい単結晶を得ることができた。得られた結晶の組成分析、X線回折結果より2212相であることが確認でき、臨界温度は83~90Kであった。また、同結晶をメサ構造に加工し、固有接合特有の多数ブランチ構造からなる電流-電圧特性を観測することができた。今後、BPSCCO固有ジョセフソン接合を用いて磁性体/固有ジョセフソン接合列/磁性体構造を作製する予定である。また、固有ジョセフソン接合列の重粒子トンネル特性に対するスピン流の影響を解明するために4端子メサ型スピンスピン素子を作製し、印加磁場方向に依存して変化する電流-電圧特性の観測に成功した。今後、微分コンダクタンスの磁場依存性を測定し、固有ジョセフソン接合特性に対するスピン注入の影響を詳細に評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、超伝導層間のジョセフソン結合強さに対するスピン流の振る舞い並びにスピン流による多数接合の協働現象の解明を計画していたが、コロナ禍の影響によりBPSCCO単結晶の作製が予定通り進まず、BPSCCO固有ジョセフソン接合におけるスピン輸送を系統的に評価するまでには至らなかった。単結晶作製条件にある程度目途がついたため今後スピン輸送評価用試料を作製し、ジョセフソン結合強さに対するスピン流の振る舞いと多数接合の協働現象の解明を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、令和2年度に得られた結果をもとに超伝導層間のジョセフソン結合強さに対するスピン流の振る舞い及びスピン流による多数接合の協働現象の解明を目標に以下の研究を遂行する。 (1) Pb添加量が異なるビスマス系高温超伝導体BPSCCOに内在する固有ジョセフソン接合を用いて磁性体/固有ジョセフソン接合列/磁性体構造を作製し、そのスピン依存伝導特性を調べることで、ジョセフソン結合強さがスピン輸送にどのように関わるのかを評価する。 (2)電磁波照射の有無に対する固有ジョセフソン接合列における超伝導トンネル特性並びに準粒子トンネル特性を系統的に測定し、スピン流が協働現象に及ぼす影響を明らかにするとともに、得られうるジョセフソン電流とスピン流との相互干渉に関する知見に基づき、その制御方法を探索する。 (3)実験データをもとに固有ジョセフソン接合におけるスピン輸送モデルの構築を目指す。
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Research Products
(5 results)