2020 Fiscal Year Research-status Report
強誘電性液晶混合系における長周期構造と無閾反強誘電状態の解明
Project/Area Number |
19K05247
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石川 謙 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (10176159)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 強誘電性液晶 / 非線形光学 / 誘電率 / フラストレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に整備した電気的測定システムを活用して、液晶試料に強電場を印加して、らせんのほどけた強誘電状態にした後の誘電率変化により基底状態への緩和過程の測定を行った。 これまでは、垂直配向セルを用いて、横電場配置での光学測定を中心に行っていたが、誘電測定にあたっては、試料のキャパシタンスを確保する必要があり、水平配向処理したセルを用いて縦電場配置での測定を行う事とした。 強誘電相および反強誘電相の濃度割合領域の試料においては、強電場により、らせん構造のない強誘電状態とした後に電場を除去すると誘電率は数十秒以内に電場印加以前の状態に復帰することが確認された。この事は、これら2つの状態においては、電場除去後数十秒以内に、それぞれの基底状態へ復帰していることを意味している。一方、V字型応答を示す濃度領域の試料に関しては、電場印加前は反強誘電的な挙動であるが、電場を印加して強誘電状態にした後に電場を除去しても、強誘電的な挙動を数時間単位では保持することが分かった。 誘電測定は、電場を印加して行うため、測定電場により系の状態が影響を受ける可能性が考えられる。そこで、測定電場による影響を防ぐために、可能な限り低電場での誘電測定を試みることとした。今年度に備品として購入した前置増幅器はこのためのもので、前年度に購入したロックインアンプとの組合わせで印加電圧が1mV程度以下でも誘電率測定可能なシステムを構築し、V字型応答を示す濃度範囲の試料に対して長時間にわたる誘電率変化の測定を行った。 その結果、V字型応答を示す濃度領域においては、電場印加により強誘電状態への転移を行い、電場を除去した後に、反強誘電的な初期状態への復帰に要する時間が2日程度以上であることがはじめてデータとして得られた。これらの結果については、今年度の日本液晶学会討論会で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスのため2020年4月の緊急事態宣言時には自宅勤務となり、その後も出勤制限があったため、4月から8月の期間にわたって実験の実施が困難であった。9月以降も出勤に制約が課せられていたため、試料の温度を連続的に変化して行うなど、測定に長時間を要する実験は困難な状況にあり、このため、研究計画に比べて全般的な遅延が生じている。 そのような状況下において、前年度の課題であった低電場下での誘電測定を実現すべく、上に記したように、システム構築を行い、データの測定を行いつつある。 また、誘電測定と同時に行う光学測定として、従来行っていた複屈折測定では縦電場の水平配向セルで変化を捉えることが困難であるために、新たに一定時間間隔で顕微鏡画像が記録できるシステムを導入し、誘電緩和の変化と併せて測定を行えるようにした。 非線形光学測定は、倒立顕微鏡との組合わせで行っているが、初年度の測定では、倒立顕微鏡に備付けられていた試料の温度保持装置の性能が低く、試料温度を正確に調整できなかったため、倒立顕微鏡用の新たなホットステージを設計製作し、精密な温度依存特性を実現できるようにした。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスのため、出勤に制限が生じる可能性があるが、上述のように測定系および付随する実験器具は準備ができており、時間の許す限り測定データの蓄積を行い、現象を解明する。 なお、現時点で測定はMC452-MC881混合系を対象に行っているが、現象の一般性を確認するためにも、測定対象をこれ以外の混合系に拡張して行う。
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Research Products
(1 results)