2019 Fiscal Year Research-status Report
微細凹凸表面構造と化学吸着単分子膜を組み合わせた透光性超撥水性防汚表面加工の開発
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19K05272
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
須崎 嘉文 香川大学, 創造工学部, 教授 (60206456)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超撥水性表面 / 化学吸着単分子膜 / 大気圧プラズマ / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ハスの葉を模倣した、微細凹凸表面構造を作製し、その表面を化学吸着単分子膜で覆うことで、表面にフッ素原子を配置することで、超撥水表面を作製することを目的としている。具体的には最初に、(1)石英(SiO2)微細粒子(例えば直径100 nm、および直径50 nm、直径12 nm)をそれぞれ組み合わせてディップコーティング法を用いて基材表面に配置固定した。次に(2)微細粒子上に、大気圧低温プラズマ成膜装置を用いて酸化亜鉛(ZnO)透明薄膜を柱状に成長させた。最後に(3)プラズマ皰年処理装置を用いてエッチング処理を行い、凹凸構造の最大高さを増加させた。以上のように作成した凹凸表面に撥水性機能部位をもつ化学吸着単分子膜(薄さ1ナノメートル以下)を形成することで、基材表面にトリフルオロメタニド基(-CF3)を配置した。この化学吸着単分子膜の膜厚は1 nm以下であり、下地凸凹形状を損なわず、分子が密に集合した超薄膜が形成できる。また、ガラス基材表面、酸化亜鉛薄膜表面とも共有結合するため、耐摩耗性に優れる特長がある。 初年度(平成31年度)の実験研究により、目的の表面構造を作製することができた。投下里とを測定した結果、可視光領域の透過率は90 %を超えた。また水滴接触角:150 °以上となり超撥水性が得られた。また、油滴接触角は90 °以上となり撥油性が得られた。またさらに、プラズマ処理によって表面凹凸の最大高さを増加させることができ、撥水性、撥油性ともに向上することができた。しかしながら、耐摩耗試験においては、十分な結果が得られなかったため、次年度の課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、透明性および撥水性をもつ表面の作製実験のために、透明なガラス基板(スライドガラス)を用いた。今年度は、フラクタル凹凸をもつラズベリー構造を作製するために以下の方法を用いた。第1段(大凹凸)の作製として、最初にガラス基板上に石英(SiO2)粒子(直径100 nm)を配置、固定した。石英粒子懸濁液に基板を垂直に浸漬し、一定速度で引き上げる、ディップコーティング法を用いることで基板上に粒子を均一に塗布した。懸濁液の中には、バインダーとしてシロキサン結合(Si-O-Si)を形成するアルコキシド系材料を混入しておき、石英粒子をガラス基板に焼結固定した。第2段(小凹凸)の作製として次に、前記大凸凹表面に大気圧低温プラズマを用いた成膜装置を用いて酸化亜鉛(ZnO)薄膜を作製した。この成膜装置は本研究室で開発したもので、タケノコ状突起柱状構造(直径40 nm)を作製できた。成膜条件を調節して、可視光域で反射防止効果のある微小凹凸を調製する。最終段階として、2段階で作製した凹凸構造表面に化学吸着単分子膜を形成した。具体的には、撥水性機能部位として-CF3基をもち、反応部位としてメトキシシリ基をもつ、化学吸着材を酸化亜鉛薄膜表面に反応・結合させた。CF3基をもつため撥水性を示す。また、化学吸着剤同士が最下部においてシロキサン結合(-O-Si-O-)することで、密に集合した単分子膜が形成できる。この化学吸着単分子膜は、分子一層の超薄膜であり、膜厚は1~2 nmと非常に薄く、基材本来の透明性を損なうことがない。作製実験の結果、可視光透過率90%以上、水滴接触角150度以上、油滴接触角90度以上のラズベリー構造の表面を作製することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究展開は、素材の組み合わせ、それぞれの条件の検討である。基本的に、凹凸の大きさ、形状によって、撥水性及び透光性が影響を受けると考えられる。以下の条件を変更することで、大小凹凸を調整する。(a)ラズベリー構造:石英粒子の直径:初期値100 nm~、石英粒子の配置密度:引き上げ速度により調整する。0.05 ~0.23 mm/s、 石英粒子固定のための熱処理温度100℃~、酸化亜鉛薄膜の形状:成膜条件により調整する。プラズマガス流量、放電電圧、成膜速度、基板温度など。(b)単分子膜:単分子膜の作製:懸濁液の濃度、溶媒の種類、乾燥条件。また、上記条件で作製した試料について、物性及び微視構造を調べ、両者の関係について学術的に検討する。特に耐久性については、今後の課題として重要である。物性:水滴・油滴接触角の測定、透過スペクトル測定、耐久性:耐摩擦試験、鉛筆硬度測定、微視構造:電子顕微鏡(FE-SEM)を用いた微視組織の観察。微細凹凸表面構造と化学吸着単分子膜を組み合わせた透光性超撥水性防汚表面加工の開発において、よりよい物性をめざす。
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Causes of Carryover |
使用した薬品などの金額が予定よりも少なく済ませることができた。次年度使用額については、次年度の実験における薬品購入のために使用する。
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Research Products
(2 results)