2019 Fiscal Year Research-status Report
Creation of molecular flow devices for environmental gas exchange by self-standing thin films with nano through holes
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19K05274
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
川田 博昭 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90186099)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノ貫通孔 / ナノインプリント / 分子流 / 自立フィルム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではナノ貫通孔付きの自立した樹脂フィルムをインプリント法により作製し、大気圧において分子流輸送でガス交換できる素子の開発を目的としている。2019年度は以下の技術開発を行った。 (1) インプリント法による微細貫通孔付き自立樹脂フィルムの作製:インプリント法で貫通孔付きの樹脂フィルムを作製することは容易でない。このため、水溶性樹脂であるポリビニールアルコール(PVA)を犠牲層とするプロセスを開発した。これにより厚さ0.7 μm、孔径2 μmの貫通孔付きのポリスチレン(PS)フィルムを低欠陥でつくることができた。PVAの熱ナノインプリントは150℃で行ったが、より低温度でインプリントできるプロセスが望ましい。そこでフィルム作製時のPVAの硬化を防ぐことにより、インプリント温度100℃でも十分成形できる低温インプリントプロセスを開発した。インプリントプロセスではモールドの作製が重要である。モールド作製時のエッチングマスクとして無電解ニッケルメッキを用いて幅200 nmのNiパターンを作製し、シリコンの深堀エッチングを行なった。 (2) フィルム強度のシミュレーションの開発:フィルムの強度を知るために有限要素法を用いてインプリント後に成形された樹脂フィルムに残る残留応力のシミュレーションを行った。インプリントのモールドプレス時に生じた残留応力はモールドを取り外した後も残ってしまうことがわかった。 (3) 測定用チャンバーの作製:気体の輸送特性を測定するチャンバーを設計した。大気圧(p~100 kPa)で気体の輸送特性が分子流となるには直径100nm程度の貫通孔が必要となる。現時点で作製できているのは直径2 μmの貫通孔を有する自立PSフィルムである。そこで、真空ポンプとガス流量100sccmのマスフロメータを備えた減圧できる測定用チャンバーの設計を行い、部材の購入を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以下の成果を得たが、問題点も明らかになった。 成果 1.インプリント法を用いて厚さ0.7 μm、孔径2 μmの貫通孔付きのポリスチレン(PS)フィルムを直径5mmにわたり低欠陥で再現性よく作製できるプロセスを確立した。2.100℃程度の低温度で水溶性ポリマーであるポロビニルアルコール(PVA)に熱インプリントできるプロセスを開発した。このプロセスはインプリントによる高アスペクト比のナノ孔作製のために必要な技術である。3.高アスペクト比のモールドを作製すために必要な金属微細パターンを無電解メッキで簡便に作製するプロセスを開発した。4.有限要素法のフィルムの強度のシミュレーションを行った。5.ミクロンサイズの貫通孔でも分子流の特徴的ガス輸送特性が測定できるようにするため減圧できる測定用チャンバーを設計した。 問題点 1.研究室で現有のプラズマエッチング装置を用いてナノ孔作製のためのインプリント用モールドを作製する予定であったが、装置故障のため所望のモールドの作製ができなかった。対策:石英ガラスのエッチングは産業技術総合研究所関西センターで現有しているプラズマエッチング装置が利用できる予定である。シリコンのエッチングは大阪産業技術研究所和泉センターのシリコン深堀用エッチング装置を利用する。2.測定用チャンバーは当初大気圧下でのガス輸送特性を測定するためブロワーファンによる排気で大気圧付近での測定を想定していたが現状に対応してミクロンサイズの貫通孔でも測定する必要性が出てきた。対策:真空排気可能な測定用チャンバーを設計し作製中である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)インプリントによるナノ貫通孔付きフィルムの作製 インプリント法を用いて2 μm径の貫通孔付きの自立PSフィルムは作製できている。同じプロセスを用いて直径0.25μm以下の貫通孔付き自立PSフィルムの作製を進める。フィルム強度の点からその膜厚は少なくとも0.7μm必要である。インプリントによりこの膜厚の貫通孔を作製するには1μm程度の高さのパターンを持つモールドによるインプリントが必要である。従って高アスペクト比のインプリントプロセスが要求される。低温度インプリントプロセスは高アスペクト比のパターニングに有用と考えられるため、低温度インプリントを用いたナノ貫通孔作製プロセスを開発する。通常のインプリント法での作製が困難な場合を考えて、フォトリソグラフィとナノインプリントを組み合わせたインプリント・フォト・ハイブリッドリソグラフィによる作製プロセスも開発する。このプロセス自体はすでに開発しているが、ここでは低アスペクト比のモールドから高アスペクト比パターンを作製するプロセスに応用する。 (2)ガス輸送特性の測定 100sccm程度のガスを流したときに5kPa以下の圧力となる測定用チャンバーを作製中である。チャンバーはA室、B室に分けており両室間を貫通孔付きフィルムで仕切れる構造である。現在のチャンバー設計ではA室にガスを導入し、B室から真空ポンプで排気を行ない、両室間の差圧よりフィルムのガス輸送特性を求める。現在作製できているミクロンサイズの貫通孔付きPSフィルムでも減圧することで分子流の特徴的なガス輸送特性が得られるかを調べていく。さらに、分圧に依存したガス輸送や熱遷移など分子流に特徴的な輸送特性を検証する。今後順次製作できてくると考えられる比較的大きなサブミクロンサイズの貫通孔付きフィルムのガス輸送特性も調べていく。
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Causes of Carryover |
2019年度の予算執行状況:当初購入予定であった実験用消耗品の一部(手袋、マスク等)の購入が不可能であった(物品費:約100,000円の予算残)。3月に予定していた学会の開催が中止となった(旅費:100,000円の予算残)。これらの理由により全体として192,247円の予算残が出た。 2020年度の予算使用計画:2019年度に購入できなかった物品の補充が必要であるので物品費を400,000円から492,247円にする(92,247円の増額)。現有のエッチング装置の故障により外部機関のエッチング装置を使用する必要が生じたので設備利用費としてその他経費を100,000円から200,000円にする(100,000円の増額)。
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