2021 Fiscal Year Research-status Report
Creation of molecular flow devices for environmental gas exchange by self-standing thin films with nano through holes
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19K05274
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
川田 博昭 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (90186099)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ナノ貫通孔 / ナノインプリント / 分子流 / 自立樹脂薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではナノ貫通孔付きの自立した樹脂フィルムをインプリント法により作製し、大気圧において分子流輸送でガス交換できる素子の開発を目的としている。2021年度は以下の技術開発を行った。 ①インプリント法による微細貫通孔付き自立樹脂フィルムの作製:モールドを樹脂薄膜に押し込んでパターニングを行うインプリント法ではモールドパターンの先端に樹脂膜が残るため樹脂薄膜に貫通孔をつくることは難しい。このため2021年度では汎用樹脂であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)とポリスチレン(PS)の二層フィルムを用いて、インプリント法とフォトリソグラフィを組み合わせたインプリント・フォトリソハイブリッドプロセスを開発した。2021年度はプロセス条件の最適化により直径5mmの範囲にわたりほぼ欠損なく厚さ1.2μm、孔径2 μmの貫通孔付きの自立PMMAフィルムを再現性よく作製した。さらにサブミクロンのモールドを用いて直径5mmの範囲に孔径0.5 μmの貫通孔付きの自立PMMAフィルムも作製できた。 ②現有のプラズマエッチング装置を用いてインプリント法により作製されたPSパターンからサブミクロンのパターンを持つSiモールドを複製した。インプリント法を用いるのでモールドの先端部でもPSの残膜が残る。この残膜処理のエッチング条件、さらに、良好な形状のSiパターンが得られるエッチング条件を求めた。これにより、本研究に必要なピラー径0.20 μm、深さ0,7μmのピラーパターンを有するシリコンモールドを作製した。 ③測定用チャンバーの作製:気体の輸送特性を測定するチャンバーの改修を行った。2021年度にターボ分子ポンプを有する排気系でチャンバーは2つに区切り部屋間の気体輸送を調べられるチャンバーを作製したが、2室の分離、ガス導入、2室の分離が不十分であることがわかったのでチャンバーの改修を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以下の成果を得たが、問題点も明らかになった。 以下の成果を得た。①インプリント・フォトリソハイブリッドプロセスを用いて厚さ1.2 μm、孔径2 μmの貫通孔付きの自立PMMAフィルムを直径5mmにわたり低欠陥で再現性よく作製できた。さらに孔径0.5μmのサブミクロンの貫通孔付きの自立PMMAフィルムも作製できた。②高価なSiマスターモールドからインプリント法を使って実際のインプリント実験で用いるSiモールドの複製を作製することは大変重要である。インプリント後の残膜処理、またナノインプリント用のモールドに適した平滑なパターン側面形状を有するSiエッチングのプロセスを開発した。これにより、本研究に必要なピラー径0.20 μm、深さ0,7μmのピラーパターンを有するシリコンモールドが作製できた。③本格的な真空にまで対応できるチャンバーを作製したことにより精度よく気体の輸送特性を測定できる準備が整った。 一方以下の問題に十分対応できなかった。①孔径0.5μmのサブミクロンの貫通孔付きの自立PMMAフィルムは作製できたが、孔径2μmのサブミクロンの貫通孔付きの自立PMMAフィルムの作製と同じ条件ではPMMA薄膜の膜厚が減少し膜強度に影響することがわかった。サブミクロン孔径を再現性よく作製するためプロセス条件の最適化が必要である。また、孔径.0.2μmのピラーパターンを持つSiモールドの作製まではできたが、このモールドを用いた貫通孔付きの自立PMMAフィルムの作製まではできていない。②試作した測定用チャンバーでは気体の輸送特性を調べるための2室の分離が不十分であり、さらに精度のよい圧力測定もできなかった。このため、必要な改修行っているが測定できるところまでは至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)インプリントによるナノ貫通孔付きフィルムの作製 インプリント法を用いて直径0.3μm以下の貫通孔付き自立樹脂フィルムの作製を進める。2021年度に直径0.5μmのサブミクロンの貫通孔付きの自立PMMAフィルムは作製できたがPMMA薄膜の膜厚が減少し膜強度が不十分であることがわかった。パターンサイズによりインプリント後の樹脂の残膜の状態が異なると考えられる。このためプロセスの最適化を進めていく。現有の装置で直径0.2μmのモールドは作製できているので、このモールドを用いて貫通孔付きの自立PMMAフィルムは作製を進める。さらに直径0.1μm、0.3μmのSiマスターモールドも準備できている。これらのインプリント用の複製モールドを作製する必要があるが、現有のエッチング装置は故障のため稼働できない場合も多い。このため外部機関の装置を活用してSiモールドを効率よく作製できる体制を整える。これらにより種々の直径のナノ貫通孔を有する自立樹脂薄膜を作製していく。 (2)ガス輸送特性の測定 10sccm程度のガスを流したときに100Pa以下の圧力となる真空用の測定用チャンバーを作製したが、チャンバーのA室、B室の分離が不十分で気体の輸送特性の測定はできていない。現在行っている回収を短期間で進め、実際の輸送特性の測定を行えるようにする。ターボポンプを有するチャンバーであるので低圧での実験も可能であり、再現性よく作製できている直径2μmの貫通孔付きフィルムで分子流領域の実験を進める。さらにサブミクロンサイズの貫通孔付きフィルムのガス輸送特性も調べ、貫通孔の孔径による気体の輸送特性を明らかにしていく。 (3)成果の公表 本研究では多くの新規プロセスを開発してきている。今後も学会発表、論文発表を積極的に行なっていく。また、直径が完全に制御された微細貫通孔の気体の輸送特性も学会発表等を行っていく。
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Causes of Carryover |
2021年度が当初計画の最終年度であったが、現有エッチング装置の故障、さらに申請者の年度後半の健康問題により研究の進捗がやや遅れ、目標達成のため研究の延長が必要となった。2022年度の使用計画は以下の通りである。Siモールド作製にプラズマを用いたエッチングが不可欠である。しかし現有のエッチング装置は故障が多く稼働が不安定である。このため外部機関の装置を積極的に利用する。この装置利用料として100,000円程度を予定している。また、実験を遂行するために必要な物品費として130,000円程度、論文掲載料および学会参加費に100,000円程度計上する。
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