2020 Fiscal Year Research-status Report
固固界面の電気二重層の解析:固体電気二重層デバイスは本当に実現可能か?
Project/Area Number |
19K05279
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
土屋 敬志 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主幹研究員 (70756387)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 固体イオニクス / 電気二重層 / ナノイオニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、電気二重層デバイスは非常に高い電荷密度によって蓄電用途のみならず様々な電子物性制御への応用が期待されている。その動作原理は、電子材料/電解質界面の電気二重層形成に伴う電子材料への静電的なキャリア注入である。電気二重層デバイスには通常は液体電解質が用いられるものの液漏れや燃焼等の危険があるため、もし液体電解質に代えて固体電解質を利用できれば実用上大変有利である。しかし、液体電解質と異なり内部での電荷補償を生じやすい固体電解質においては液体同様の電気二重層効果の有無が未だよく分かっていない。そこで本研究では固体電解質/電子材料界面における電気二重層効果について、固体電解質における欠陥化学、固体イオニクスの視点を用いて詳細に調査し明らかにする。 本年度は、電圧印加で誘起された電気二重層効果により静電的なキャリア注入が起こっている電子材料/固体電解質界面の電位分布を電極表面からの硬X線光電子分光でその場観察した。昨年度ダイヤモンドと組み合わせて作成したトランジスタで電気二重層形成を確認した固体電解質(Li-Si-Zr-O)薄膜の表面にAu薄膜電極を成膜して2端子セルを作成した。このセルで電圧印加状態でAu電極近傍にリチウムイオン欠乏領域を生じさせ、Au電極および固体電解質の内殻準位を観察した。物質中の光電子の平均自由行程を考慮して解析することにより、Au電極/固体電解質界面の極近傍、1nm以内に急峻な電位分布が生じている事を明らかにした。また、電気二重層効果が阻害されることがわかっているLi-La-Ti-O固体電解質薄膜の界面を走査型透過電子顕微鏡を用いてその場観察を行い、電圧印加によってリチウムイオンの輸送自体は正常に起こっていることに加え、Tiの酸化還元が起こっている事を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
硬X線光電子分光を用いた電気二重層形成状態の電極/固体電解質界面近傍での電位分布観察までが当初の計画であったが、走査型透過電子顕微鏡の電子エネルギー損失分光法を用いたその場観察によって電気二重層形成の阻害要因についての検討まで推し進めることが出来たため、計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、電気二重層形成挙動の違いを陽イオン、陰イオン含めより広範な元素を含む調査範囲に拡大し、電気二重層形成に関与する要因を明らかにする。さらに、電気二重層効果の動的挙動についても調査し、固体電解質の種類や界面構造に対する電気二重層の静的・動的挙動の依存性を明らかにする。
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