2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of cryogenic electron optics for improving transmission electron microscopy
Project/Area Number |
19K05285
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
岡本 洋 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (70455799)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 電子光学 / 極低温 / 量子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘリウム3冷凍機の構築に向けて、2Kパルスチューブ冷凍機の動作環境を整えた。従来はパルスチューブ冷凍機を小型の真空チャンバーに抜き差ししていたが、80mm角のアルミフレーム材料を用いて大きな装置架台を製作し、パルスチューブ冷凍機を固定した形で真空チャンバーを上げ下ろしできるようにした。このことにより、煩雑な極低温部の配線等を「その場」で行うことができ、またメンテナンスの度に配線の再接続等に気を使う必要がなくなる。また、真空配管も作り付けのままにしておくことができる。ポンピング時の配管の収縮によるポンプへの望ましくない力を除去するため、ベローズを複数持つ配管の形態には特別の工夫をした。今回実現した信頼できる実験インフラと実験作業時のその利便性は、より複雑な次の開発ステップが単に楽になるということではなく、次のステップに進むためには事実上不可欠である。また、極低温における電界放射電子銃を再現性良く安定に製作するため、専用エッチング回路を徹底的にオーバーホールした。極低温に適した細いワイヤ径の電子銃のエッチング実験も開始した。以上の研究開発において、修士課程の大学院生2名、学部生1名、機械加工を行った職員の活躍が重要であった。 以上のように、実験研究はまだ研究の土俵に乗るための準備段階であるが、すでに国際会議に2件発表し、大学院生の1名は賞までもらうことができた。学術的に新しい知見は理論研究から得られ、それは量子電子顕微鏡において原理的には非弾性散乱による悪影響をかなり軽減できるというものである。この結果についてはプレプリントを公開し、学術誌に投稿しているが本報告執筆時点では査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書ではヘリウム3冷凍機の設計と実装が計画されているので、文字通りには達成されていないが、上述のように、ヘリウム3冷凍機の構築に向けて重要な環境セットアップを行うことができた。その意味において「おおむね順調に進展している」と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
量子電子顕微鏡研究はまだまだ始まったところであるが国際的に次第に速度が上がりつつあり、本研究に興味を持って下さる研究者が現れてきている。このうちトルコ共和国、Sabanci大学の研究者は希釈冷凍機および超伝導デバイス微細加工施設を保有しており、今後強力なパートナーになると考えている。またカナダのNRC(国立研究所)の電子顕微鏡の専門家とも、電子光学設計において研究協力を開始する。香港の電子顕微鏡研究者とも研究協力について相談を始めた。コロナウイルスの流行により互いの訪問は難しいが、ビデオ会議を複数回開催している。研究パートナーができると、量子電子顕微鏡実現をめざす最善最速の研究ルートが変化する。小規模研究の利点を生かし、よく考えながら今後弾力的に対応していきたい。
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Causes of Carryover |
ヘリウム3冷凍機のベースとなるパルスチューブ冷凍機システム(無負荷で到達温度2K)の環境開発に時間を費やしたため、ヘリウム3ガスハンドリングシステムに必要になる部品群が未購入である。 新しく表れた研究パートナー(トルコ共和国)の希釈冷凍機が使えることになったが、その一方で日本における予備実験ではやはりデバイス材料のアルミニウムが超伝導状態になることが望ましいため(転移温度1-2K、酸素含有量による)、現時点では引き続きサブケルビンに到達するヘリウム3冷凍機の設計製作をすすめる計画である。
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Remarks |
プレプリント:Hiroshi Okamoto, Resilient Quantum Electron Microscopy, arXiv:2001.05603v2 受賞:M2高山幸広君、2th Asia Pacific Microscopy Conference(APMC2020)にてIFSM Students/ Young Researchers Contest(YRC) Award
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