2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of cryogenic electron optics for improving transmission electron microscopy
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19K05285
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
岡本 洋 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (70455799)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 量子電子光学 / 超伝導デバイス / 非弾性電子散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の報告にあるように、量子電子顕微鏡において原理的には非弾性散乱による悪影響を相当程度軽減できる、という理論研究が査読中であった。その後、当該研究に大きな穴が見つかった(査読者に指摘されたわけではないが)。具体的には、非弾性散乱が起きた個所と、(ダイポール領域で非弾性散乱が起きているとして)ダイポールの方向が不可知であるため、従来の議論による量子状態分別がそのままでは不可能であるという問題であった。この議論を”修理”するのに1年ほどかかった。議論を修理できただけでも幸運であったが、これを近日中に再査読してもらう予定である。原稿量は大幅に膨れ上がってしまったが、arXiv:2001.05603v3として公開されている。 実験サイドでは、極低温電子光学装置の大型化を引き続き行っており、大きくなった真空チャンバーに見合った大きさの65K輻射シールドを4年生の卒業研究として作成した。また、希釈冷凍機と超伝導デバイス作成設備のあるSabanci大学(トルコ)との研究協力が次第に軌道に乗りつつあり(トルコ側でshadow evaporationによる超伝導デバイスの形状作成には既に成功)、彼らの希釈冷凍機に搭載可能な低加速電圧用の電子銃の作成にも成功の手掛かりが得られた(数回作成に成功したので、少なくとも不可能ではないことが分かった)。 なお、卒業研究生の1名が本研究に関連して「電気学会東北支部優秀学生賞」および「令和2年度 本荘由利テクノネットワーク 【学生×企業】事業 秋田県立大学学生発表会・コンテスト優秀賞(アダマンド並木精密宝石株式会社、企業賞)」を受賞したことを付記する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第1にコロナ禍によるオンライン教育の負担が想像以上に大きかったこと、また第2に昨年度で大学院生が卒業したこと、これらのために遺憾ながらどうしても進捗が遅くなりがちであった。
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Strategy for Future Research Activity |
理論研究は引き続き進め、非弾性散乱の悪影響軽減の論文を出版する。それに続く理論研究もスタートする。実験面では極低温装置の整備、希釈冷凍機環境用の電子銃の研究を継続するほか、トルコ(Sabanci大)、カナダ(NRC-Alberta大)、香港(香港城市大)との研究協力・研究交流を積極的に継続する。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」の欄に書いた理由により、2020年度に行うはずの研究全体が後ろにシフトしたためである。研究に時間的遅れはあるものの、研究自体に不具合はないため計画通りに研究を進める。
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Remarks |
セミナー(オンライン、招待)を実施:「The emerging field of quantum electron microscopy」,香港城市大学 Fu-Rong Chen研究室、2021年3月
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