2019 Fiscal Year Research-status Report
プラズモン共鳴による光濃縮効果を用いた膜タンパクの結晶化
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19K05291
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
奥津 哲夫 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (20261860)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀内 宏明 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (00334136)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 金ナノ粒子 / 表面プラズモン共鳴 / タンパク質 / 結晶化 / 膜タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
金ナノ粒子のギャップモードの表面プラズモン共鳴を誘起すると、タンパク質の結晶化が促進されることを見出した。金ナノ粒子にはタンパク質が吸着すること、表面プラズモン共鳴による増強電場によりタンパク質がトラップされて、さらに金ナノ粒子表面に吸着することが判明した。本研究では、 結晶化が容易なタンパク質としてニワトリ卵白リゾチームを用いて機構を解明した→市販されているタンパク質を用いて結晶化の方法がわからないと想定したスクリーニング実験で結晶化の確率が高くなることを演示実験で示した→結晶化が難しいと知られている人血清アルブミン(HSA)を用いてスクリーニング結晶化実験を行い、容易に結晶化できることを示した→今までに結晶化に成功していないタンパク質を入手し結晶化実験に取り組んだ→膜タンパク質の結晶化実験に取り組む の段階を踏んで進んでおり、最終段階の一歩手前まで来た。今までに明らかにしたことは、 1.吸着量を吸収法により測定することにより観察し、増強電場により吸着量が増えることを確かめた。2.金ナノ粒子の粒子間距離を変えてナノ構造を設計し、増強電場の強度を変え結晶化との関連を対応させた。粒子間距離を変えたときの増強電場の強さを計算し、その結果と結晶化の関連を考察した。3.ギャップモードの表面プラズモン共鳴を誘起して結晶化を促進する光源の開発を行った。光は強い方がよりトラップする作用が強いと考えていたが、光のエネルギーが熱に変わり、熱的な擾乱が生じるためトラップされた分子が逃げてしまう問題があることが明らかとなった。そのため、強すぎず分子をトラップするのにちょうどよい光の強さがあることがわかった。4.膜タンパク質の結晶化をバクテリオロドプシンで進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの問題で3月から研究は6月半ばまで停止状態にあったが、このことを考慮しなければおおむね順調である。理由は、予期せぬ実験結果ではなくほぼ期待していた実験結果が得られていることである。 1.メカニズムの解明が進み、機構がほぼ明らかになった。 2.照射する光に求められる性質が、結晶化する機構に沿った結果となり、矛盾なく起きていることを説明できている。実用化を意識した場合も適切に開発が進んでいる。 3.結晶化が容易なモデルタンパク質で機構解明→市販されている複数のタンパク質を用いた実験で同様の実験結果が得られた→結晶化が困難なタンパク質として人血清アルブミン(HSA)を用いて結晶化に成功→結晶化ができないタンパク質で初めて成功する、という段取りの最終段階まで来ていること。 の段階で進んでいる。膜タンパク質の実験に支障があった。膜タンパク質としてバクテリオロドプシンを用いているが、これは他の研究室で発現実験を行い、試料を得ている。昨年、遠心分離機が故障しその修理が研究室の経済的事情によりできないという問題が発生して、実験が停止したことがあった。現在は他の機器を使用することで解決したが、新型コロナウイルスの問題で6月現在停止したままである。
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Strategy for Future Research Activity |
1.バクテリオロドプシンを用いた膜タンパクの実験を再開する。遠心分離機の問題が解決したので実験を再開する。ただし、学年が新しくなり学生もメンバーが変わったので、一からやり直しになる。実験は2回同じ結果が出れば正しいと判断する。すでに一度成功しているので、同じ実験を行いあと一回成功すればよい。次にバクテリオロドプシン以外の膜タンパク質を用いた実験の準備を行う。 2.まだ結晶化に成功していないタンパク質を用いて結晶化実験を成功する。長崎大学歯学部より提供された歯周病に由来するタンパク質を用いて結晶化実験を行う。 3.論文を執筆し投稿する。 4.同じ原理で新型コロナウイルスを捕獲し不活化する材料を作り、試験する。金ナノ粒子のギャップモードの性質を用いればタンパク質を吸着するので、タンパク質で構成されたウイルスも吸着することが期待できる。増強電場は多光子吸収による励起状態を生成させタンパク質の変性をもたらし、ウイルスを不活化することができると期待される。このような機能を有した材料を作成し、マスクの素材や空気清浄機のフィルターなどに応用することを想定する。結晶化の研究で得られた成果を他に応用する基礎的研究に手を付ける。
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Causes of Carryover |
2020年にハワイで環太平洋交際会議が開催される予定があり、参加するために繰り越した。
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Research Products
(17 results)