2020 Fiscal Year Research-status Report
高品質GaAsN系超格子の成長と励起子に関する研究
Project/Area Number |
19K05295
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
牧本 俊樹 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50374070)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | GaAsN / MBE / バンドギャップエネルギー / PL / S-shape特性 / 局在準位 / Nクラスター / 電気伝導特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
RF-MBE法で成長した不純物ドープしたGaAsNおよびGaAsを評価することにより、以下の3点を明らかにした。 (1) N組成の低いSiドープGaAsNをフォトルミネッセンス(PL)測定で評価した。Si不純物濃度が低い場合には、従来の報告と同様に、PLピークエネルギーが測定温度の上昇とともに高エネルギー側へ変化するS-Shape 特性を示した。[1]これに対して、GaAsN中に高い濃度のSi不純物をドーピングすることにより、S-shape特性が消失する現象を初めて観測した。この理由として、Si不純物濃度が高くなることによって、キャリアの寿命が短くなることが挙げられる。そして、この研究成果を査読付英文誌で発表した。 (2) 高濃度のSi不純物をドープしたGaAsNに対するアニール温度依存性を評価した。アニールを行うことにより、電子濃度が減少した。そして、深い準位が存在することを明らかにした。この深い準位はアンドープGaAsNでも観測されることから、GaAsN固有の深い準位であることを明らかにした。 (3) N組成の低いBeドープGaAsNをPLで評価した。Si不純物の場合と同様に、GaAsN中に高い濃度のBe不純物をドーピングすることにより、S-shape特性が消失した。この理由も、Be不純物濃度が高くなることによって、キャリアの寿命が短くなることが挙げられる。そして、高濃度のBeドープGaAsNでは、Be-N複合欠陥が形成されていることを示唆する実験結果が得られた。これらの実験結果をまとめて、国内学会において2件の発表を行った。 [1] 例えば、H. Yaguchi et al., phys. stat. sol. (b) 228 (2001) 275.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不純物の種類に依存せず、高濃度の不純物をGaAsNへドーピングすることによって、S-shape特性が消失する現象を初めて観測した。これらの実験結果から、このS-Shape特性にはキャリアの寿命が関連することを明らかにした。これらに関連した研究成果を査読付英文誌で発表するとともに、2件の国内会議で発表した。 以上の研究成果の他にも、光伝導特性に関する評価方法を確立した。今期は、特性の良く知られているGaAsの光伝導特性を評価した。今後は、GaAsNの光伝導特性を評価する予定である。 一方で、コロナウィルスの影響により、大学構内への立入制限やMBE装置の故障が発生したため、結晶成長や特性評価を行うことができなかった期間があった。このため、来期に向けての準備が十分にできなかったために、来期の研究成果の進捗に悪影響が出る恐れがある。 以上を総合すると、当初の計画以上の研究進捗を目指したものの、今期に限っては、おおむね順調に研究が進んでいる状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、RF-MBE法を用いて、不純物ドープしたGaAsN系半導体やGaAsN系超格子構造を成長する。そして、光の吸収・透過測定やPL測定などを用いることにより、その光学特性に関して評価を行う。さらに、その光学特性をAlGaAs/GaAs超格子と比較することにより、GaAsN系超格子の特徴を抽出する。 以上のようなRF-MBE法を用いたGaAsN系半導体の結晶成長を通じて、RF-MBE法による結晶成長条件の最適化を行う。
|
Causes of Carryover |
一部の消耗品を次年度に購入することとした。
|