2019 Fiscal Year Research-status Report
磁気光学結晶-on-insulator基板の実現とナノフォトニクスへの応用
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19K05300
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 泰友 東京大学, ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構, 特任准教授 (90624528)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 磁気光学 / 薄膜光学材料 / 磁性ガーネット / ナノフォトニクス / フォトニック結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノフォトニクス技術の発展には、薄膜光学材料の開発が極めて重要である。本研究では、磁気光学材料による絶縁体上の光学薄膜(磁気光学結晶-on-insulator基板)を開発し、同薄膜を用いて磁気ナノフォトニクスを開拓することを目指している。 今年度は、磁性ガーネット基板のスピンオングラスを介したシリコン支持基板上へのウェハ融着、同複合基板の物理・化学研磨、また磁性ガーネットのドライエッチング技術の構築に取り組んだ。 ウェハ融着においては、スピンオングラスを接着層として用い、そのスピンコート条件やアニール温度および貼り付け前の処理条件を変化させつつプロセス条件の最適化を進めた。基礎的な条件出しにおいては、ガーネットと同じ酸化物であるガラス板も並行して用い、貼り付け基板の視認性を確保することで、迅速な評価を可能とした。特に融着前の事前処理について重点的に調べたところ、スピンコート後に空気プラズマ処理を施すことで、貼り付け安定性が向上することを見出した。 物理・化学研磨においては、ダイヤモンドスラリーを研磨剤に、いくつかの研磨パッドを用いて実験を進めた。ウェハ融着における面内均一性が高い場合、粒径の大きなスラリーを用い荷重をかけて、ガーネット基板が割れることなく研磨できることを見出した。この際、最大7000nm/min程度の研磨レートを実現できた。また、粒径の小さいスラリーおよびシリカ粒子を含む化学機械研磨液を用いて荒研磨後の基板を鏡面化処理することに成功した。結果、シリコン基上に貼り付けたガーネット基板を3000nm程度まで薄膜化することに成功した。 ドライエッチングでは、三塩化ホウ素・アルゴンガスによるプラズマを用いて、最大50nm/min程度のレートでエッチングできることを見出した。ただ、エッチングマスクとの選択比が依然低く、よりよい条件を探索する必要があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
支持基盤に貼り付けた磁性ガーネットの薄膜化に成功した。これは本研究における中心的な役割を果たす要素技術であり、もっとも重要な研究課題である。同技術の進展を鑑みて、着実に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ウェハ融着においては、より条件を細かく制御しつつ、その再現性や融着強度・均一性の向上に取り組む。また、基板上に残存したパーティクルにより融着が阻害される事例が多く見られるため、基板の事前洗浄条件の見直しや、パーティクル付着を防ぐためのプロセス手順・基板操作方法の見直しを進める。また、融着界面を近赤外透過顕微鏡で観察することで、可視域で不透明な磁性ガーネット基板においても融着条件と融着結果との対応を系統的に調べる。 研磨においては、一層の薄膜化・高品質化に向けて、特に粒径の小さいスラリーを用いた実験の条件だしを丁寧に進める。また、薄膜化時に発生する面内膜厚不均一性に対応するため、基板の研磨ホルダーへの貼り付け条件を再検討する。またガーネット層を数1000nm程度まで研磨した基板に関しては、ドライエッチングを用いて目的の数100nm厚まで薄膜化することを検討する。 ドライエッチングにおいては、まずより広範囲に条件出しを進め、パターンマスクと大きな選択比を保つことが可能なエッチング条件の探索を行う。目的の光学構造には、垂直なエッチング側壁の実現が求められる場合も多く、側壁角度にも注意しつつ条件出しを進める。また、現状では電子線顕微鏡観察時において、チャージアップが発生し、精密な条件評価が妨げられている。今後は、導電性材料をコーティングすることで、観察像の質向上に取り組む。また、条件出しの進展状況によっては塩素系ガスに代わるガス種の利用も検討する。 上記の実験的な研究と並行して、磁気ナノフォトニクス構造の電磁界設計にも取り組む。まずはイットリウム鉄ガーネットピラーによるフォトニック結晶を検討し、そのバンド構造や光透過率を調べる。特に、垂直入射時におけるFaraday回転に着目し、同物理現象の増大が可能な光構造を検討する。
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Causes of Carryover |
安価なガラス板を用いてウェハ融着および研磨に関する予備実験を進めた。その進捗が若干遅れた結果、想定よりも磁性ガーネット基板を使用しなかったため,未使用分が発生した。今後は、より磁性ガーネット基板購入に予算を振り分け、同材料の薄膜化の実験を加速する。
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Research Products
(2 results)