2020 Fiscal Year Research-status Report
半導体量子構造による円偏光の高偏極長スピン寿命電子への変換
Project/Area Number |
19K05313
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
竹内 淳 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80298140)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 半導体量子構造 / スピントロニクス / 化合物半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
半導体中のスピンの自由度を利用すれば従来のエレクトロニクスでは実現できなかった新しい機能をデバイスに付加できる。特に円偏光からスピン偏極電子への高効率の変換の実現は新たな光スピントロニクスデバイスの開発に重要である。また、この変換の実現によってスピントランジスタ等の動作実証に不可欠の高いスピン偏極率を持つスピン偏極電子の注入も可能となる。本研究は、半導体量子構造を用いて「円偏光」を「高いスピン偏極率を有するスピン偏極電子」に変換し半導体中に注入することを目的とする。 光励起によるスピン偏極率の向上を図るには、ヘビーホールとライトホールのエネルギー準位の分離のために井戸幅が狭い方がのぞましい。一方で、井戸幅が狭いとスピン緩和時間が短くなるという課題が存在する。そこで、これを解決するために狭い量子井戸で作ったスピン偏極電子を幅の広い量子井戸にトンネル効果を利用して移して長寿命化を図る。この目的のために、タイプI型量子井戸(GaAs)の隣にバリア層(AlGaAs)を介してタイプII型量子井戸(AlAs)を積層したタイプII型トンネル双量子井戸のトンネル時間とスピン緩和時間を測定した。その結果、AlGaAsバリア層が異なる3種類のサンプルにおいて、励起光強度を上げた際のスピン緩和時間の変化が異なることが明らかになった。 なお、2020年度は、新型コロナ感染症にともなう緊急事態宣言等により、実効的な実験時間が減少したので、2021年度に実験の後れを取り戻したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染症にともなう緊急事態宣言等により、実験を行う学生の登校時間が平年より大幅に減った。その結果、実効的な実験時間が減少した。このためタイプII型トンネル双量子井戸のスピン緩和時間の測定にも支障をきたし、測定予定であった4試料のうち、信頼性のある測定を行えたのが3試料にとどまっている。2021年度は、なるべく早い時期でのワクチン接種を期待し、実験の遅れを取り戻したい。
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Strategy for Future Research Activity |
タイプII型トンネル双量子井戸のスピン緩和時間の測定を進め、トンネル効果による電子の移動がスピン緩和時間の伸長にどのように影響するかを明らかにしたい。特に、タイプII型のAlAs量子井戸に電子が移動すると、タイプI型の量子井戸に残ったホールと空間的に分離されるので電子とホールの交換相互作用が小さくなり、スピン緩和時間が伸びることが期待される。
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Causes of Carryover |
本研究は、半導体量子構造を用いて円偏光を高いスピン偏極率を有するスピン偏極電子に変換し半導体中に注入するスピン偏極電子源の実現を目的としているが、測定対象は化合物半導体の量子構造であり、主な測定手法としては、レーザー光を用いた時間分解測定を行っている。2020年度は、時間分解測定に必要な光学部品の対応波長の検討等に時間を要したことに加えて、新型コロナ感染症にともなう緊急事態宣言等により、実効的な実験時間が減少したことから、当初2020年度に使用予定であった予算の一部を次年度使用とし、研究目標の達成のためにより効果的な使用を図ることにした。
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