2020 Fiscal Year Research-status Report
Intense UV-pulse source using quasi phase matched quartz
Project/Area Number |
19K05317
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
石月 秀貴 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 研究員 (90390674)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 擬似位相整合 / 水晶 / 非線形光学 / 波長変換 / 紫外光 / レーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、耐久性や安定性に優れつつも非線形光学材料としては有効利用されていない水晶を用いた擬似位相整合(QPM)波長変換素子を実現し、これを用いた高強度紫外域(UV)パルス光源を構築するとともに、微細加工や質量分析への適用検討を行うことを目的としている。 水晶(α相石英)は優れた光学材料であると同時に、世界で初めての非線形光学波長変換実験に利用された非線形光学材料でもある。しかし複屈折性が極小であるため、通常の複屈折位相整合(BPM)を用いた効率的な波長変換への利用は困難である。これに対し、結晶内部に人工的周期構造を形成できれば、QPMに基づく位相整合により水晶を用いた効率的波長変換が可能となる。このQPM水晶素子を実現できれは、水晶の透明域(最短150nm) 全域で利用可能で、耐久性や安定性に優れた新たな波長変換素子が構築できる。このQPM水晶は、従来より用いられている(主にホウ素系)非線形光学結晶の欠点である潮解性が無く、高耐久かつ高安定性を備えることが期待できる。そしてこれを用いたUV 光源は基礎研究から産業応用まで広範囲の展開が期待できる。 このQPM水晶実現の新たな手法として、研究初年度である2019年度に周期的応力印加を介したスタンプ法を独自に提案している。研究2年目である2020年度は特にその高精度化および均一化を目的としてプロセス条件の最適化を進めるとともに、これと並行して材料である水晶の基礎特性評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
QPMに必要な構造周期は対象とする光源波長に応じて変化し、一般には短波長化に伴い短周期化する。例えば第2高調波発生(SHG)においては、532nm緑色光発生で42ミクロン、266nm紫外光発生で6ミクロン程度の構造が最適周期である。一方でQPMの特徴から、その整数倍の周期構造においても、変換効率は低下するものの波長変換動作自体は可能である。また、QPMにおいては構造周期とともにその一様性も重要なパラメータであり、均一性に劣る構造では変換特性も劣化する。したがって高精度化(短周期化)と均一化について、並行してプロセス条件の検討を行った。 その結果、532nm緑色光発生用の3次QPMに適した周期124ミクロンにおいて、素子長10mm程度にわたり波長変換に適した均一反転構造を形成できることを確認した。作成したQPM水晶素子を用いた波長変換実験により、理論予測に一致する偏光特性を示すことを確認した。 また、上記の構造形成検討と並行して水晶の光学特性を改めて評価した。水晶は紫外から近赤外域まで透明な光学材料である一方で、近年研究が急速に進展しているテラヘルツ波長域でも利用可能な材料と言われるが、その検討は不十分である。今回はテラヘルツ波長域における光学特性を評価するとともに、このテラヘルツ波長域におけるQPM素子実現に必要な構造周期の算出などを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
水晶の材料特性を最大限に活かす紫外光発生に適したQPM水晶素子の実現には、均一性を維持しつつ短周期構造化が求められる。その一方で、高出力レーザー光を取り扱うためには素子の口径(受光面積)の拡大も必要となることから、短周期・広開口の高アスペクト比構造を実現する必要がある。特にスタンプ法は水晶板表面からの応力印加であるため、広開口を得るため、深い周期構造形成を可能とする条件探索を行う予定である。 これと並行して、テラヘルツ波長域における水晶の利用可能性も併せて検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者である石月は、本研究計画の実施開始年である2019年4月にそれまで在席していた自然科学研究機構分子科学研究所から理化学研究所に所属を変更した。設備の移動および研究実施環境の再構築は前年度である2019年度に完了したが、これによる全体の研究実施時期全体に若干の遅れが生じたことが、次年度使用が生じた理由である。 しかし、初年度に新規提案および実証した、スタンプ法による水晶への周期反転構造形成の高精度化が進展している他、当初計画にはなかったテラヘルツ波長域への展開も進めており、これに関する学会発表(国際および国内会議)も行っているなど、研究実施状況に大きな問題は無いと考えている。 研究最終年度である2021年度は、当初計画に従い深紫外光や真空紫外光発生に適用可能な構造微細化、高精度化および均一化検討を進めるとともに、微細加工や質量分析等への適用検討、テラヘルツ波長域応用検討を併せて行う予定である。
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