2019 Fiscal Year Research-status Report
原子力材料健全性評価に資する動的変形挙動/照射硬化への熱活性化影響の研究
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19K05326
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
福元 謙一 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 教授 (30261506)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 照射硬化 / 原子力材料 / 引張試験 / TEM / 変形挙動 / 照射損傷 / 熱活性化過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子力構造材料の照射硬化・脆化による健全性評価や寿命予測を、動的変形挙動の実験の統合解析により明らかにする。イオン照射した原子力構造材料を用いた広範囲の温度領域での変形に伴う転位運動および転位-照射欠陥相互作用の動的変形組織観察実験から、運動転位性状変化と障害抵抗強度解析による照射誘起延性脆性遷移温度(照射誘起DBTT)上昇機構の解明による予測手法の開発と、照射欠陥の内部応力温度依存性による熱活性化過程を通して、微視的スケールからの照射硬化量の定量的評価/予測が得られる。これら成果を基に軽水炉や次世代原子炉の原子力構造材健全性評価予測技術手法の開発・高度化に貢献する。 実施する研究内容として、イオン照射した各種原子力材料に対して低温から高温までの温度領域でTEM内引張試験『その場』観察技術を用いて転位挙動や照射欠陥-転位相互作用を観察することにより ①低高温の試験温度領域に対する動的転位挙動観察を用いた転位性状変化に伴う転位挙動とDBTT現象の相関について明らかにする。 ②転位-照射欠陥相互作用の動的観察から照射欠陥の内部応力の温度依存性を求め、照射欠陥分布に依らない照射硬化現象の温度依存性(非熱活性化過程と熱活性化過程の弁別)を明らかにして照射硬化メカニズム解明とその定量化に資する。 本年度の成果として研究の一部を金属学会鉄鋼協会北陸信越支部連合講演会(2019.12.新潟大学)にて発表した。さらに、材料照射研究会(2020.1.東北大金研仙台)において最優秀ポスター発表賞を受賞したことを付記する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高温観察を行うにあたり試料形状の不揃いによる高温TEM内引張用試料の金型を作製し、試料作製工程の精度を向上させた。 SUS316Lと純Moに対し、若狭湾エネルギー研究センタータンデム加速器でイオン照射することで照射欠陥を導入した試料を作製した。高温TEM内引張「その場」観察は九州大学極顕微解析センター(HVEMセンター)にて実施した。300℃He照射したSUS316L鋼は150℃と250℃で観察し,500℃He照射した純Mo試料は300℃で観察した.低温TEM内引張「その場」観察については初めての試みであったため,SUS316Lの未照射材を試料として用いた.観察温度は-170℃で行った. イオン照射した純Mo試料では運動転位と照射欠陥の相互作用を観察した。500℃Heイオン照射では転位ループが形成され、ボイドは形成されなかった。引張変形に伴い転位が移動し転位ループを吸収してピニングポイントからの張り出し、そして離脱する行程が観察された。転位すべり方位解析かららせん転位と転位ループの相互作用であり、転位ループ障害抵抗は0.3程度であると推定され、室温変形での値に近いと推測される。 SUS316L鋼を-170℃まで冷却した際に、観察前にき裂が発生したため実験が実施できなかった。これは熱膨張により試料の長手方向に荷重がかかってき裂が進展したためであると推察される。 さらなる高温引張試験『その場』試験を行う計画ではいたが、コロナウイルス禍により他大学での研究が困難になり、結果として当初目標より全体的に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き本研究は次の二点を解明することを目的として実施する。 1. イオン照射したBCC純金属(Mo,V,Fe)を用いた77K~室温の温度範囲におけるTEM内引張その場観察実験を行い、転位と欠陥集合体(ボイドおよび転位ループ)の相互作用における可動転位性状変化および転位―欠陥相互作用の質的変化ついて明らかにし、転位挙動の微視的/熱活性化過程の観点から脆性-延性変形挙動遷移機構について解明する。 2. 高温(300~600℃)におけるBCC純金属のイオン照射材を用いたTEM内引張その場観察実験から転位-ボイド相互作用の質的変化を求めて、相互作用の熱活性化過程を支配する 因子を明らかにし、室温試験で得られた硬化因子に関する知見の高温における適用可能 性について明らかにする。 引き続き、九大HVEMセンターにて低温/高温引張変形『その場』観察実験を実施し、引張変形試験による転位運動に抗する照射欠陥の相互作用の直接観察より障害強度や転位性状さらに転位運動速度の測定から、照射欠陥の障害強度因子および臨界剪断応力を求める。試験温度変化、特に脆性破壊および延性破壊温度領域における転位挙動および転位-欠陥集合体相互作用について各種パラメータを抽出する。また脆性延性遷移温度領域に特に着目して実験を行い、延性脆性遷移機構の発現要因について明らかにする。
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Causes of Carryover |
2020年3月期の学会発表などがコロナウイルス禍により中止となり、大幅な研究計画の修正に伴い、十分に研究費用を使い切れなかったため残額が発生した。少額であるため次年度計画において今年度達成できなかった実験の旅費費用に組み込んで、2020年度に達成できなかった研究目標と合わせて2021年度の研究目標達成に向けた計画を立て実施していく。
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Research Products
(2 results)