2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of subcritical measurement technique for unknown systems
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19K05328
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
遠藤 知弘 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (50377876)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 未臨界 / 一点炉動特性 / 原子炉雑音 / 三次中性子相関法 / 動的モード分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
詳細な情報が不明あるいは不確かさが大きな体系を対象とした未臨界度測定に関する研究として、2019年度は以下の研究を実施した。 ①過渡変化時における中性子計数率の時系列データの情報から、不確かさが大きな体系においてドル単位未臨界度を測定する手法として時間領域分割積分法(Time-Domain Decomposition-based Integral method, TDDI法)を新たに考案した。従来の中性子源増倍法や逆動特性法の場合には、体系の未臨界度だけでなく、外部中性子源強度だけでなく一点炉動特性パラメータが同時に変化するような過渡変化の場合に、正しく未臨界度を推定することができなかった。新たに考案したTDDI法では過渡変化前後の定常状態と、過渡変化が起こっている最中の時間領域を分割し、状態変化前と変化後の定常状態の中性子計数率、状態変化途中の中性子計数率の時間変化のみ測定し、各時間領域における中性子計数率の時間積分を求めることで、状態変化後のドル単位の未臨界度を推定することができる。(a)近畿大学原子炉(UTR-KINKI)において未臨界度と外部中性子源強度が同時に変化する未臨界過渡変化実験、(b)京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)において未臨界度と一点炉動特性パラメータが同時に変化する未臨界過渡変化実験をそれぞれ実施し、TDDI法の有効性を実証した。 ②カリフォルニウム中性子源とポリエチレン減速材を用いることで、核分裂連鎖反応の起こらない非増倍体系において三次中性子相関法実験を実施し、非増倍体系において中性子相関量の比が臨界状態の固有数「3」とは有意に異なる値となることを実証した。 ③仮想的な数値実験を通じて、複数の中性子検出器の測定結果から、体系固有の基本モード成分に相当する即発中性子減衰定数を抽出するデータ駆動型の手法として、動的モード分解が適用できる見込みを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度研究では、ステップ状だけでなく任意の時間変化にも適用可能なTDDI法を新たに考案し、日本国内に存在する2つの実験炉(UTR-KINKI、KUCA)を利用して、提案手法の有効性を実証することができた。得られた研究成果についても、学術論文や国内・国際会議発表を通じて迅速に公表することができた。 パルス中性子法を模擬した仮想数値実験によるフィージビリティスタディを通じて、未臨界炉心の異なる位置に複数の検出器を配置し、パルス中性子打ち込み後に得られる中性子計数率(∝中性子束)の時系列データに対して動的モード分解を適用することで、体系固有の基本モード成分に対応する即発中性子減衰定数を頑健に推定できる見込みを得ることができた。 また、パルス中性子法等により測定可能な即発中性子減衰定数の測定結果を活用し、バイアス因子法あるいは炉定数調整法といったデータ同化手法を適用することで、(1)測定対象とした未臨界炉心における実効増倍率の不確かさや、(2)実験体系で用いられている各核種の評価済み核データが有する不確かさも低減できる点についても研究を進め、国際会議による発表を通じて広く公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
中性子計数の統計誤差に起因した即発中性子減衰定数の実験誤差を評価するため、動的モード分解による即発中性子減衰定数の統計誤差評価手法の開発に取り組む。具体的には、パルス中性子法で測定された中性子計数の時系列データに対して、ブートストラップ法の適用を試みる。実際の測定結果に対する適用性を調べるため、加速器駆動のKUCA未臨界炉心におけるパルス中性子法の測定結果に対して動的モード分解を適用し、動的モード分解による基本モードの即発中性子減衰定数の測定法を実証する。 2019年度研究において、原子炉停止時の深い未臨界状態にある実験炉(UTR-KINKIおよびKUCA)おいて、長時間に渡る炉雑音測定を実施することができた。この測定結果に対して三次中性子相関法を適用することで、臨界状態固有の数「3」から統計的有意に差があるか否か分析を進める。中性子検出時刻情報が収録された膨大なデータを、計算機メモリで取り扱いやすい単位毎のデータファイルに分割し、ファイル単位のブートストラップ法を適用することにより実用的な分析手法を考案する。
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Research Products
(9 results)