2020 Fiscal Year Research-status Report
Systematic experiments for influence of methyl radical and hydrogen bond on neutron slowing down and scattering data derivation
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19K05339
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
原田 正英 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究主幹 (50354733)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安部 豊 京都大学, 工学研究科, 助教 (80378794)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メチル基 / 水素結合 / 中性子の減速 / 系統的実験 / 散乱データ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、(1)メチル基もしくは水素結合を有する水素含有物質メタン、水素、軽水、ポリエチレン、エタン、2ブチン、メチルアセチレンの中性子透過・散乱データを測定して全断面積及び二重微分断面積を系統的に取得すること、(2)理論計算と比較し、メチル基及び水素結合が、中性子の減速過程においてどのような影響を与えるかを明らかにすることである。エタン、メタノール、2ブチン、メチルアセチレンの中性子透過・散乱の測定データ、理論データは存在しておらず、室温で気体である試料を使用した試料セルを用いた実験はほとんどないため、これら物質の実験データを取得することの意義は大きい。そして、メチル基もしくは水素結合を含む水素含有物質の系統的な測定データや理論データの蓄積は、中性子の減速過程に与える影響を明らかにすることに大きな役割を果たす。 2020年度までは、J-PARCの核破砕中性子源における特性試験装置(NOBORU)と非弾性散乱装置(AMATERAS)にて、20K~300Kの温度領域で、軽水、重水、メタノール、エタノール、ベンゼン、トルエン、p-キシレンの中性子透過・散乱データ測定を行った。透過データからは、全断面積へ変換し、他者の実験データや研究分担者の安部らの計算データとの比較の結果、大きな矛盾がないことを確認した。10meV以下の領域では、全断面積に、温度依存の傾向がみられることも確認した。また、バナジウム試料データを利用し、散乱データから二重微分断面積への変換を試みた。ガスだまりを作り、低温で液化させることで、室温常圧で気体である試料も使用でき、ガスの導入ラインを常設する必要がないという利点がある常温気体試料用容器の試験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①実験準備、②実験及び解析、③理論計算との比較、の3つに分けて進捗状況を説明する。 ①実験準備では、2019年度から2020年度にかけ「室温気体試料容器及び導入装置の製作」を行う予定で、今後測定する液体試料を購入し、室温気体試料容器を製作して試験を行った。室温気体試料容器は試験方法や設置方法がうまくいかず、調整が必要であることが分かった。 ②実験及び解析では、2019年度から2021年度にかけ、「中性子透過実験」「中性子非弾性散乱実験」は、J-PARCの核破砕中性子源における特性試験装置(NOBORU)と非弾性散乱装置(AMATERAS)にて中性子透過及び散乱データを取得・解析する。年4種類の試料を測定できるように課題申請を行い、2021年度までのマシンタイムを取得した。2020年度末までに、軽水、重水、メタノール、エタノール、ベンゼン、トルエン、p-キシレンまで測定実験を行い、透過データから全断面積への変換は終了した。密度の温度依存性があることがわかり、精度の高い絶対値を出すためには、密度測定などの対応が必要であることが分かった。研究協力者の協力により、散乱データから二重微分断面積の変換を進めた。バナジウム試料による規格化を試みたが、バナジウム試料、対象試料、空試料のいずれかに問題があるようで、精査が必要である。 ③理論計算との比較は、2020年度から2021年度にかけて実施する予定であり、2020年度は、②実験及び解析で測定された全断面積との比較を進めた。規格化は課題であることを確認した。 以上のことから、現在までの進捗状況はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
①実験準備、②実験及び解析、③理論計算との比較、に分けて説明する。 ①実験準備では、2021年度は、原田が主担当となり「室温気体試料容器及び導入装置の製作」により製作した試料容器のオフビーム試験及びオンビーム試験を行う。オフビーム試験で、安全に冷却して使用できることを確認した上で、オンビーム試験を行う。 ②実験及び解析では、2021年度も、原田が主担当となり「中性子透過実験」「中性子非弾性散乱実験」を継続して行う。実験には、引き続き、J-PARCの核破砕中性子源における特性試験装置(NOBORU)と非弾性散乱装置(AMATERAS)を利用する。残っている試料とガス試料の測定完了を目指す。 ③理論計算との比較では、2021年度は、②の実験で得られたエネルギー・運動量遷移情報を含む全断面積と二重微分断面積の測定データを基に、安部(研究分担者)らにより開発された分子動力学解析により分子原子の詳細な運動を熱中性子散乱則に反映させる手法による理論計算と比較し、理論計算の精度を上げる。 これらの成果は、原子力学会などにて公表する。
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Causes of Carryover |
物品費に関しては、「室温気体試料容器」において、安全上の問題解決と現状機器との調整に時間がかかり、「導入装置」の整備、オンビーム試験に必要な物品の購入ができなかった。また、旅費に関しては、研究分担者との打合のための出張や、原子力学会等への出張を予定していたが、新型コロナウィルス感染症拡大の影響ですべて取りやめとなり、執行できなくなった。 2021年度は、オンビーム試験のための機材を購入し、オンビーム試験を遂行して、データ取得を完結する。並行して、研究分担者との打合せやJ-PARCでの実験、原子力学会への参加発表などの出張を行う。次年度使用額と2021年度分経費を合わせて、これらに係る費用として執行する。
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