2019 Fiscal Year Research-status Report
石油のメタン発酵による石油増進回収-CO2フリー水素供給源創出の可能性の検証
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19K05347
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
中村 浩平 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (40456538)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | CO2フリー水素 / メタン生成アーキア / 嫌気的原油分解 / CO2回収貯留 |
Outline of Annual Research Achievements |
①石油のメタン発酵微生物群のコア生物群の特定 申請者が有する石油メタン発酵微生物群のひとつから,亜優占種として存在するAcidobacteria門細菌のメタゲノム解析を行った。本Acidobacteria門細菌は未だ培養株が存在しない,未培養細菌のひとつで,本培養系のみならず原油・石油関連環境等から多く検出されている。Acidobacteria門属細菌のMetagenome Assembled Genome(MAG)は,メタゲノムデータの品質評価プログラムCheckMによる解析の結果,完全性が高く,コンタミネーションが低い高品質のデータであった。そのMAG内に予測されたCDSのうち,KEGGによるアノテーションで69%に酵素・タンパク質が割り当てられた。さらに代謝経路の予測によって,グルコース,ガラクトース,マンノースを初めとする種々の単糖や多糖やタンパク質の利用が可能であることが示唆された。好気呼吸や硝酸塩や硫酸塩を用いた嫌気呼吸に必要な酵素を欠損したが,水素の発生を伴う膜結合型フェレドキシンヒドロゲナーゼを保持し,その働きによりATP生産をすることが示唆された。本Aminicenantes門細菌は石油分解メタン発酵系において有機物を分解し,メタン生成アーキアに発酵産物の水素を提供する可能性が示唆された。 異化的硫酸塩還元芳香族炭化水素分解細菌TSK株の各種性状解析を行った。本菌株と近縁種の性状を比較した結果,本菌株はDesulforhabdus属細菌の新種だと推定され,同属内で特異的なトルエン分解能を持つために,Desulfohabdus toluolicaと命名提唱する。 ②高圧CO2条件下における石油のメタン発酵微生物群への影響評価 軽油を石油のモデル物質として用い,石油メタン発酵微生物群を植菌し,CO2を2~10 atm添加した培養系を30℃で培養を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高圧CO2条件下ににおける石油のメタン発酵微生物群の影響評価を行うために,購入予定のシリンジポンプが販売停止になってしまい,後継機の販売を待つ必要が生じた。また,後継機の納品後の培養実験の条件検討に思いのほか時間がかかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
①石油のメタン発酵微生物群のコア生物群の特定 申請者が有する石油メタン発酵微生物群において,脂肪族炭化水素の分解に関与すると考えられるProteobacteria門細菌が複数存在する。それらが異なる鎖長の脂肪族炭化水素の分解に関与していることが示唆されているため,RNAベースのアンプリコン解析と脂肪族炭化水素の分解プロセスを解析し,Proteobacteria門細菌毎の脂肪族炭化水素の分解能を調査する。さらにProteobacteria門細菌のメタゲノム解析を進め,その代謝能を予測し分離を試みる。前年度のメタゲノム解析から有機物を水素発酵し,メタン生成を補助すると考えられたAminicenantes門細菌についても同様にして分離培養を試みる。 石油分解メタン生成微生物群には,まだいくつかの亜優占種候補の未培養細菌が存在しており,それらのメタゲノム解析を進め,その機能について調査する。 ②高圧CO2条件下における石油のメタン発酵微生物群への影響評価 前年度から培養を開始した高圧CO2条件下の培養系について,メタン生成能及び軽油分解能について調査する。微生物群集構造についてメタ16S解析,メタゲノム解析を行って調査する。10 atmでメタン生成・軽油分解が確認されれば,徐々にCO2圧力を上げて,CCS環境に近い~60 atmまでの条件で培養を行う。現在保持する石油メタン発酵微生物群集は,常温大気圧環境の河川や池などの油兆を分離源としたため,CCSを想定する地下環境(油田)由来の試料を取得し,新たな培養系を立ち上げる。
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Causes of Carryover |
メタゲノム解析にかかる費用が節約できたため。また,高圧CO2実験用の実験容器を見直し,新たに選定したものが以前の計画より安価に購入できたため。差額については,更なるメタゲノム解析(mRNAベースのアンプリコン解析解析を含む)と高圧CO2実験用の器具の購入に用いる。
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Research Products
(2 results)