2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of a method to estimate residence time of geothermal fluid using multiple environmental tracers
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19K05348
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柏谷 公希 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40447074)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地熱流体 / 温泉水 / 滞留時間 / 環境トレーサー / 主成分分析 / 独立成分分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,多項目の環境トレーサー分析結果に基づいて地熱流体に含まれる起源の異なる流体を検出し,それらの混合割合を求めた上でそれぞれの滞留時間を推定する手法を開発することを目的としている。 本年度は,2019年度にインドネシア・バンドン盆地周辺の地熱地域で採取した温泉水,湧水,河川水試料の分析を継続し,これら水試料に含まれる微量元素濃度のデータを蓄積した。これまでに得られているデータに基づいて,例えばTampomas地熱地域では塩素,ヨウ素,臭素の濃度や濃度比などの相関に着目することで,湧出する温泉水は主に海水と天水を起源とすることが明らかとなった。放射性塩素(Cl-36)同位体比の初期値は海水と等しく,天水の混合は同位体比に影響しないと仮定して算出された滞留時間は数十万年程度であった。また,ある地点の温泉水には海成有機物の影響が認められ,本地点では放射性塩素同位体比から推定される滞留時間が長いことから,長期間の滞留によって水―岩石反応が進行したものと考えられた。さらに,分析で得られた主要溶存イオンと微量元素の濃度に主成分分析(PCA)や独立成分分析(ICA)といった多変量解析手法を適用することで,地熱流体を構成する起源の異なる流体の混合割合やこれら濃度に影響を及ぼしたプロセスの推定を試みた。その結果,溶存成分濃度の高い水と低い水の混合や,炭酸塩との反応などが温泉水の化学組成に影響を与えていることがPCAとICAの両方で示され,上述のハロゲン元素に基づく検討結果と整合的であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象地域であるインドネシア・バンドン盆地周辺の地熱地域におけるサンプリングと多項目の地球化学的指標を対象とした分析が完了している。Tampomas地熱地域を対象に環境トレーサーを用いた滞留時間推定や独立成分分析などの活用による地熱流体の水質形成プロセスの把握などが行えており,当初の計画を達成しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
1) Tampomasについては,本年度のPCAおよびICAで対象とした溶存成分の種類が限られていたことから,他の成分の濃度や同位体組成も含めた分析を行う。これにより,これまでに得られている地化学データから地熱流体の起源や混合割合,水質進化プロセスなどについてさらに情報を抽出する方法について検討し,より信頼性の高い滞留時間推定を目指す。 2) Tampomas以外の地熱地域(Patuha,Wayang Windu,Tangkuban Perahu)についても,PCAやICAを適用することで地熱流体の起源や混合割合,水質進化プロセスなどを推定し,その結果を踏まえて適切な環境トレーサーを選択することで滞留時間推定を行う。特に盆地南側に分布するPatuhaとWayang Winduの各地熱地域は(少なくとも部分的には)蒸気卓越型であり,滞留時間推定に利用可能な成分がTampomas地熱地域とは異なるものと考えられる。蒸気卓越型の地熱地域で流体の起源や混合割合の推定,滞留時間算出に利用可能な成分や推定の手順を明らかにする。
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