2019 Fiscal Year Research-status Report
天然ガスハイドレート備蓄における岩盤タンクの低温下挙動評価技術の確立
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19K05350
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
木下 尚樹 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 准教授 (30263958)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 天然ガスハイドレート / 岩盤タンク / 低温下挙動 / 亀裂性岩盤 / 透水 / 二層流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はスラリー状天然ガスハイドレート(NGH)を地下岩盤タンク内に備蓄する新たな技術の提案である.既存技術と異なる点は摂氏マイナス20度という備蓄温度であり,そのため,第一段階としては低温下における岩石亀裂の気・液浸透特性,力学・変形特性を実験により精密に定量評価,把握することが必要となってくる.基本的な物性の一つとして常温および低温下における岩石亀裂の気液浸透特性を把握するため,低温透気試験装置,気液二相流実験装置を開発・実験し,低温下での透気性状,低温履歴が透気・透水特性に及ぼす影響を考察した. 開発した実験装置は摂氏マイナス20度Cの環境下での透気試験を再現可能とした.供試体はベレア砂岩を使用し,室温状態(摂氏20度)で透水試験,透気試験を実施する.その後72時間で温度を摂氏マイナス20度にした後に低温透気試験を行う.その後24時間で室温状態に戻し,再び透水試験,透気試験を実施する.これにより低温履歴が透気・透水特性に及ぼす影響を精査した.なお,透過流体は脱イオン水および窒素ガスである. 試験的な実験の結果,低温履歴前後でガスの固有浸透係数の変化はみられなかった.また,低温では固有浸透係数が低くなった.低温履歴後の水の固有浸透係数が高くなっており,低温時に岩石供試体が収縮し,その後常温に戻すと供試体は再度膨張することになるが,その体積収縮・膨張の過程で供試体内に微小な亀裂が入ったためとと考えられる.またガスの固有浸透係数と水の固有浸透係数を比較するとガスの固有浸透係数の方が大きい.これはガスの固有浸透係数の間隙圧依存性を示すKlinkenberg効果によるものであると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
常温および低温下における岩石亀裂の気液浸透特性を把握するため,低温透気試験装置,気液二相流実験装置を開発・実験し,低温下での透気性状,低温履歴が透気・透水特性に及ぼす影響を考察した.実験の結果,実験装置の開発は成功したと考えられる.今後,さらにデータを取得し,実験精度を高める必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
開発した実験装置を用いて摂氏マイナス20度環境下の岩石亀裂の透水・透気特性のデータを蓄積し,メカニズムについて考察する. さらに,摂氏マイナス20度環境下の岩石の力学特性の解明にも取り組む.目的としては,室温~低温環境下の対象岩盤の変形・強度特性の把握である.成果は亀裂を含む岩石の熱膨張率の把握,強度特性,変形特性(弾性係数など)である.具体的には岩石用三軸圧縮・透水試験装置に低温温度制御装置を設置する.対象岩石は既往の研究で物性の明らかになっている岩石を用いて,温度変化に伴う体積膨張を測定し,熱膨張率を算出する.これにより,熱膨張特性を明らかにする.さらに,圧縮試験を実施し,強度・変形特性を明らかにしていく.
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Causes of Carryover |
当初予定していた,摂氏マイナス20度環境下の岩石の力学特性の解明のための,岩石用三軸圧縮・透水試験装置に低温温度制御装置を設置・改良するのに時間を要しているためであり,これらは次年度に継続して実施する.改良後は,低温下の岩石の熱膨張特性を明らかにし,さらに,圧縮試験を実施し,強度・変形特性を明らかにしていく予定である.
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