2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of in-situ bioleaching of gold ore using iodide-oxidizing bacteria
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19K05352
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
菅井 裕一 九州大学, 工学研究院, 教授 (70333862)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 金 / 原位置バイオリーチング / ヨウ化物酸化細菌 / ヨウ素 / ヨウ化物 / 三ヨウ化物 / Monodの式 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の初年度に千葉県の水溶性天然ガス田の地層水試料から単離したヨウ化物酸化微生物を用いて培養実験を行ない、同微生物を用いた金の原位置リーチングの可能性について検討した。同微生物は好気性微生物であるため、地下に存在する金鉱床内における培養では酸素の不足が課題である。貧酸素条件にある地下金鉱床内における同微生物の培養を想定して、酸素をウルトラファインバブルの形で培地に含ませて、嫌気環境下における培養実験を実施した。その結果、培地中における同微生物の菌体濃度が4.0×10^4cells/mLから1.0×10^6cells/mLにまで増加し、貧酸素条件下における増殖が認められた。しかしながら、同じ条件で培地に金鉱石を含ませた培養実験によれば、銅鉱石からの金の溶出は確認できず、金の溶出に十分なヨウ化物の酸化によるヨウ素の生成が生じなかったと推察された。 一方、同微生物を用いた金の原位置バイオリーチングの数値シミュレータの構築を目的とした同微生物の増殖挙動の数式化ならびにヨウ化物のヨウ素への酸化挙動と金の溶出挙動の数式化を実施した。同微生物の増殖については、その炭素源を含むマリンブロスを制限基質として取り扱い、Monodの式を用いて数式化を行った。すなわち、マリンブロス濃度を5段階に変化させた培養実験を実施し、各マリンブロス濃度において観察された増殖速度から、Monodの式を導出した。培養実験結果から同微生物一菌体が酸化するヨウ化物量を算定し、それを微生物の増殖数に掛けることでヨウ化物の酸化量とヨウ素の生成量ならびに化学量論に基づいた三ヨウ化物の生成量を数式化した。これらの数式を用いて計算機上で同微生物の培養実験と金の浸出実験を実施した結果、同微生物の増殖挙動や金の浸出挙動が実験結果をよく再現しており、本研究で目的とする数値シミュレータに導入する数式を導出することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年間の研究により、本研究の着想であるヨウ化物酸化細菌を用いて金鉱石から金を浸出することができることを実験的に示し、さらにウルトラファインバブルの形で酸素を供給することにより原位置における同微生物の増殖可能性を示すことができた。貧酸素条件が想定される原位置において金を浸出するほどのヨウ化物の酸化によるヨウ素の生成を確認するところには至っていないものの、酸素ウルトラファインバブルの供給量を増やすなど、同微生物の活動をさらに高める条件設定により原位置におけるヨウ化物の酸化促進を達成できる見込みを得ることができている。 これと並行して進めている数値シミュレータの構築についても順調に進められている。当該年度の研究により、同微生物の増殖挙動とヨウ化物の酸化挙動を忠実に再現できる数式を導出することができた。研究者がこれまでに構築してきた石油の回収における微生物利用技術に関する数値シミュレータを金の原位置リーチング用に改良し、これに当該年度に導出した各種数式を導入すれば目的の数値シミュレータが完成するため、当初の目標を上回る進展が得られている。 このように、課題として残された研究内容もあるものの、予想以上に順調に進展している内容もあり、それらを総合的に評価し、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に酸素のウルトラファインバブルを用いて貧酸素条件下におけるヨウ化物酸化微生物の培養に成功したものの、金鉱石から金を浸出させるまでのヨウ化物イオンの酸化とヨウ素の生成を得るまでには至っていない。したがって、今後は、さらに酸素ウルトラファインバブルの供給量を増加させる方法を検討して、同微生物の増殖・代謝を活性化させ、貧酸素条件下におけるヨウ化物の酸化とヨウ素の生成を実現させる。現在までにウルトラファインバブルの生成方法として市販の家庭用ウルトラファインバブル製造器を用いているため、バブルの濃度を増加させたり、バブルを構成するガス種の純度を向上させたりすることが困難であった。今後は研究用のウルトラファインバブル製造器を本学の機器共同利用制度を利用して使いながら、酸素純度の高いウルトラファインバブルをより高い濃度で生成させて培地に含ませ、ヨウ化物酸化微生物を培養して貧酸素条件下における金鉱石からの金の溶出可能性を実証する。 また、同微生物を用いた金の原位置リーチングの数値シミュレータを完成させる。すでに同微生物の増殖挙動やヨウ化物の酸化挙動ならびに金の溶出挙動を表す数式は導出したため、これらを導入するシミュレータの改良を推進する。基礎となるシミュレータは石油の回収技術に関するものであるため、孔隙率や浸透率、温度、圧力、金品位など、金鉱床のデータを既存の数値シミュレータに入力して金鉱床モデルを構築する。これに、前述した微生物挙動に関わる数式を導入して、目的の数値シミュレータを完成させる。
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