2019 Fiscal Year Research-status Report
High accuracy analysis of new gas deposits from Cretaceous and Paleogene in Hokkaido on the basis of fluid inclusion and application to mining developments.
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19K05358
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
鮎沢 潤 福岡大学, 理学部, 助教 (70184249)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 新規ガス鉱床 / 北海道東部(道東)地域 / 白亜系 / 古第三系 / 流体包有物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の申請時および交付内定時の研究計画書に沿い、関係機関への調査に伴う立入承認と協力依頼の取り付け、野外調査と試料収集、初年度に計上した物品(機械器具)の導入と立ち上げ、一部の試料については処理と測定を実施した。計画書に記載の地表と坑内調査によって研究遂行に必要な試資料の増強を図ったほか、企業・学校教育・社会教育機関で保管されている堆積岩試料から流体包有物を含むことが期待される自生鉱物試料の譲受ないし借用を受けた。これらは産地や層準などの情報を伴い研究の遂行上、必要かつ有用である。さらに(独法)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が北海道南部の太平洋海域で実施した「基礎試錐 日高トラフ」成果報告会(2019年11月、東京)へ出向き、対象地域の資源工学および地質情報の収集とJOGMECから試錐カッティングス供与の道筋をつけることもできた。基礎試錐は流体包有物の情報が含まれておらず、本研究の展開による補完的情報はガス・石油鉱床評価のうえで有用と期待される。導入物品は光学系の改造改良を加え、研究遂行に必要な加温条件下での流体包有物均質化の良好な捕捉を認め、既収試料を用いたクロスチェックと指示温度の一致確認、新収試料の試験的な測定と既存の資源工学・地質情報へ統合した予察的な解析まで進んでいる。現時点で本研究の直接的な成果を示す論文・著書の刊行には至っていないが、流体包有物による古地温指標を含めた北海道白亜系・古第三系ガスおよび石炭鉱床の共著論文を国際誌へ投稿中である。また道東の燃料資源鉱床を対象とする書籍を共著で刊行すべく出版社と協議を進めている。学会発表は当該研究に関して2件を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進捗状況に関し、地権者・鉱業権者への調査立入の承認と協力依頼の取得、野外調査と試料収集、企業・学校・社会教育機関・(独法)石油天然ガス・金属鉱物資源機構などで保管されている堆積岩試料等から流体包有物を含むことが期待される自生鉱物試料の譲受・借用(申請中を含む)、初年度に計上した物品の導入・立上げ・改造改良、岩石鉱物の扱に習熟したアルバイト学生の任用による試料の測定前処理、標準物質および既収試料を用いたクロスチェックと均質化温度の精度確認、一部試料については測定、予察的な解析まで完了している。現時点で本研究課題の直接的な成果を明示する論文・著書の刊行には至っていないものの、流体包有物による古地温指標を含む北海道白亜系・古第三系ガスおよび石炭鉱床の共著論文を国際誌へ投稿中である。また、道東の燃料資源鉱床を対象とする書籍を共著で刊行すべく出版社と協議を進めている。 申請時に導入を計画した機器に関し、仮に3年間の研究費全額を投じたとしても当該物品の推定納入価格に達しないことが複数の業者との交渉で確定した。次善の策として、代替機器の光学系へ改造改良を図ったのち既収試料や標準物質を用いた表示温度の一致確認を行い、研究計画の妥当性や得られる成果の汎用性とも矛盾なく本来の計画と同等水準に近い効果が得られる状況に達した。ただし冷却条件下での測定に関しては解決が必要な点が残されている。またアルバイト任用を依頼する学生の単位取得状況や就職活動等の事情により、測定試料の処理について当初計画から若干の遅れがあることは否めない。これらの問題はあるものの、進捗状況は当初の計画どおり(2)おおむね順調に進展していると見做して差支えない。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の進捗および成果をもとに、今後は(独法)石油天然ガス・金属鉱物資源機構から供与を受ける予定の試錐カッティングス試料の吟味、測定に先立ち必要な試料の前処理、光学系の改造改良に伴い生じる冷却実験時の問題解決などと併せて、自生鉱物中に含まれる流体包有物均質化に基づく古地温測定の作業を進める。測定と解析の結果は既存の資源工学および地質情報へフィードバックし、ガス・石油根元有機物の熟成度と温度条件との関係把握へ展開する。これらの結果として明らかになる、鉱床賦存ポテンシャルの高い地域・層準を対象に補足的な野外調査と試料収集を実施する。得られる知見は随時、関係学協会での発表や論文・著書の刊行、可能であれば学校教育や社会教育現場でのアウトリーチ活動などを通して社会への還元を図る。 基本的な研究計画に大きな変更点は無いもののCOVID-19問題に伴う対策が必要である。既に、遠隔授業の実施までに生じた休講期間、学生アルバイトの登学は出来ないものの、研究代表者が試料処理から測定・解析に至る一連の作業を進めてきた。本研究の対象地域は緊急事態宣言の解除が遅れたため、調査時期と期間に関しても見直しを余儀なくされる。往路の早朝便・帰路の最終便利用、移動日も可能なかぎり調査を実施などの方策を採る。研究遂行のうえで重要な夏期と冬期の休業中は補講実施期間となる見込であるが、この時期に複数の学生アルバイトを任用し作業の推進を図る。これらによって執行遅れの回復、COVID-19問題の研究への影響を最少に抑えるとともに研究費の有効な活用につとめる。なお一連の野外および室内作業は厚生労働省や北海道庁保健福祉部の指針に沿い、安全かつ確実に進めるのは当然である。
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Causes of Carryover |
物品(機械器具)費と謝金の執行が原因で次年度の所要見込額の増加、すなわち繰越金が生じた。これは申請額に対する3年間の交付総額が当該物品の推定納入価格を下回り、仮に研究費の全額を機械購入に充てたとしても納入は不可能なことが最も大きな原因である。次善の策として採った低額機種への変更と光学系の見直しが繰越額の殆どがを占める。謝金に関してアルバイトを依頼する学生の単位取得状況や就職活動状況に懸念材料があり、作業の着手が当初予定より遅れたことが挙げられる。これらはいずれも申請段階での予見が不可能であった。繰越金の発生から派生する研究計画への影響が皆無とはいえないものの、大局的に2020年度の研究計画に大きな変更点は無い。主たる研究遂行の期間として予定していた夏期休業と冬季休業が補講措置のため使えなくなる可能性が問題であるが、同期間に登学することになった学生に学業への影響が無い範囲で複数名のアルバイトを任用し、それに伴う人数増・時間増の財源として繰越金の有効利用を図りたい。このほか論文別刷代や当初計画では最終年度に予定していた学校教育・社会教育機関へのアウトリーチ等のための費用へ加配する等の方策で、研究費の有効活用と研究の円滑な展開に繋げる。
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