2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on structures and orientations of proteins in lipid bilayers by heterodyne-detected vibrational SFG spectroscopy
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19K05362
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石橋 孝章 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70232337)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 正人 筑波大学, 数理物質系, 助教 (20611221)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 振動和周波発生分光 / 全内部反射ラマン分光 / 脂質二分子膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
振動和周波分光による研究として,複雑な構造を持つタンパク質より簡単な構造を持ち,界面での二次構造や配向が他の手法によって推定されているポリペプチド界面について,HDキラルVSFG信号を測定し,信号の符号および強度と二次構造および配向の関係を検討した.具体的には,αへリックスをとることが提案されているpoly-α-benzyl-L-glutamate (PBLG)とLK14α,および逆平行βシートをとることが提案されているK(LK)7βの三種類のポリペプチドの気水界面について検討した.さらに,モデル系に対する量子化学計算を用いたキラルVSFGスペクトルのシミュレーションを行ったところ,観測されたVSFG信号を定性的に再現することができた.界面のタンパク質やポリペプチドのキラルVSFGスペクトルは,経験的に界面における二次構造と強い相関があることが知られていたが,その相関の成立機構は確定していない.本研究によって,界面での配向や構造が他の手法で推定されている系について,キラルVSFG信号のヘテロダイン法による符号を含めた測定とモデル計算によるシミュレーションによって,経験則がおおよそ説明できることがわかった. 全内部反射ラマン分光については,Langmuir-Blodgett/Langmuir Schaefer法によってプリズムー水溶液界面に基板支持DPPCリン脂質二重膜を作製し,コレステロールの混合の効果を測定した.測定されたラマンスペクトルのCH伸縮振動領域には,2848 cm-1,2882 cm-1にCH2の対称,逆対称伸縮振動バンドが,2930 cm-1付近には脂質鎖のCH3対称伸縮振動のフェルミ共鳴のバンドが確認された.コレステロール濃度の増加に伴って,2930 cm-1の2882 cm-1に対する相対強度が増大が観測された.この傾向は水溶液中に分散されたベシクル試料についても観測されるものであり,基板支持二重膜試料の状態がベシクル試料とよく対応していることを示している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
VSFG分光については,昨年度に発生したVSFG分光装置のレーザーシステムの出力低下のため,当初の予定より研究の進捗がやや遅れている.本年度,部品交換・修理によって出力を向上させることができたので,この問題はほぼ解決できた.当初の計画していた予定のうち,無細胞合成に関する研究は中止し,それ以外の部分について研究を進める予定である.全内部反射ラマン分光に関しては,分光装置の構築など予定にそっておおむね順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
細胞膜を可視化するためのSHG用色素分子であるAP3と膜との相互作用を,界面選択的な振動分光法であるヘテロダイン検出振動和周波発生(HD-VSFG)分光法によって検討する.細胞膜のモデルとして、Langmuir-Blodgett/Langmuir Schaefer法によって固体基板/水界面に作製した基板支持脂質二分子膜を使用する.膜中でのAP3分子の配向方向を検討する.電子共鳴条件下の測定も試み,HD-VSFG分光の感度をどの程度の向上することが可能であるかについても検討する. 全内部反射ラマン分光に関しては,これまでに構築した装置を使い脂質二重膜―タンパク質複合体の測定を進める.二重膜と水溶液に接触させ,水溶液に直鎖αヘリックス型の抗微生物性ペプチド(アラメシチン,セクロピン,モリシン等)を注入し,ペプチドの水溶液中から脂質膜への吸着侵入挙動をラマン分光と振動SFG分光で観測する.また,HD-VSFG分光でグラミシジンの系についてもラマンスペクトルの測定を進め,二分子膜中でVSFGサイレントな構造となった状態でも,膜近傍にグラミシジンが吸着することを確認する.
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Causes of Carryover |
本年度は,VSFG分光についても全内部反射ラマン分光についても,試料部の改良などを中心に研究を進めた.特にSFG分光装置の基幹部分であるチタンサファイヤレーザーの修理等があり,新しいポリペプチドやタンパク質などを使った測定は来年度に持ち越すことになった.このため,次年度使用予定の予算が残った.これは,昨年度に控えた試料の購入などに使用する予定である.
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Research Products
(8 results)