2020 Fiscal Year Research-status Report
サブ分子スケールでの新たな分類体系に基づく層状液晶相の分子充填様式と物性の相関
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19K05363
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山村 泰久 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (80303337)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沓水 祥一 岐阜大学, 工学部, 教授 (80214964)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 液晶 / 層状液晶相 / スメクチック相 / アルキル鎖 / 分子集合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
「分子がどのように充填しているか」は,分子集合体の物性の理解には不可欠な情報であり,単純な剛体分子モデルで凝集構造が表現されてきた液晶でも同様である.その代表である分子が層状構造の集合体を形成する層状液晶相において,柔軟なアルキル鎖部分のとる形状が異なる二通りの分子充填様式が存在することを我々は提案している.その提案に基づいた新しい枠組みで液晶の物性が見直される必要があり,これまで築かれた層状液晶相の物性科学に関して,この新しい枠組みを基盤とした視点から再検証が必要である.本研究は新しい視点による層状液晶相の物性の解明を目的とし,液晶分子の充填様式の違いに起因する液晶物性の差異を見出すことにより,新しい枠組みを基盤とする層状液晶相の分子充填様式とマクロ物性の相関を確立することを目指すものである. 今年度は,(a)研究対象とする系の候補の選択およびその物性測定と,(b)研究対象候補の一つであるnOCTの合成方法の確立と多量合成を目指した.しかしながら,今年度当初から新型コロナの影響を受けたため,研究は計画したようには進まなかった. (a)については,分子充填様式の異なる液晶分子同士の二成分系について,昨年度とは異なる新たな二成分系の凝集構造と相挙動の検討を行った.熱測定,X線回折法による回折パターンの測定,および,偏光顕微鏡観察により,その二成分系の相図と,構造および熱的な物性の検証を行った.また,SmA相を示す別の液晶化合物についても,熱測定を始めとする物性測定を行った.他にも,SmC相を示す液晶化合物の凝集構造の検討を行い,この層状構造の特徴を有するキュービック相の凝集構造の解析も行った. (b)については,nOCTの複数の同族体の多量の試料合成を進めることが出来た.合成した液晶物質の熱物性および凝集構造の検討を一部行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナの影響により,長期間大学校内に入校することが制限されたため,当初予定していた実験を行うことが出来ず,進捗状況は大幅に遅れることとなった.今年度の予定は,(a) 研究対象とする系の候補の選択および一部物性測定と,(b)候補物質の一つであるnOCTの合成であった.(a)については,昨年度とは異なる液晶化合物の検討を行い,その二成分系にも着手したが,新型コロナの影響により,満足するデータ量は確保しておらず,継続して実験を進めている.一方,既に測定済みのデータの解析や,結果の解釈については,ある程度進めることが出来ている.(b)のnOCTの合成については,複数の鎖長をもつnOCTについて,多量の合成をすることができたので,その一部の物性測定については進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については,(a)充填様式の異なる層状液晶の二成分系の物性評価と(b)nOCT同族体の合成と物性評価を行う.(a)については,これまで見出した二成分系の相図の完成と凝集構造,熱的物性の検討を行い,得られた結果の解釈を,構造的,および熱力学的見地から解明する.(b)については,nOCTの多量合成の続きと,それらの物性測定を行い,充填様式と相挙動の関係について検討を進める.また,nOCTの二成分系の物性評価も進める.これらを基に,分子の充填様式という新たな観点に基づいて,研究の総括を行う.
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Research Products
(5 results)