2019 Fiscal Year Research-status Report
The role of intermolecular interaction in solvent reorientation dynamics ---A molecular scopic study utilizing time-resolved IR spectroscopy---
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19K05368
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
宮崎 充彦 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (00378598)
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Project Period (FY) |
2019-11-28 – 2023-03-31
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Keywords | 溶媒和クラスター / 溶媒和ダイナミクス / 時間分解赤外分光 / 分子動力学計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、光励起、化学反応に伴う溶媒和ダイナミクスを個別分子の運動に基づき分子論的に理解すること、特に、溶媒分子間の相互作用が溶媒和ダイナミクスにおよぼす影響を溶媒和構造変化の情報から実験的、理論的に明らかにすることを目的としている。 令和元年度は、外国滞在や、所属先変更のために、課題を12月から再開した。しかし、所属先変更に伴う実験装置の移設が遅れたため、実験的研究を進めることがほとんどできなかった。そこで、溶媒和構造変化を起こす系の探索・構造予測を量子化学計算から進めた。 複数の水を持つクラスターの系として、4-アミノベンゾニトリルや9,9’-アンスリルの水和クラスターにおける構造変化を量子化学計算により見積もった。申請段階から予定していた4-アミノベンゾニトリルの二水和クラスターでは、安定構造、イオン化に伴う構造変化を明らかにした。二つの水分子間の水素結合が保たれる過程と、解離する二つの過程が考えられることがわかった。光励起電子移動を起こす9,9’-アンスリルの水和クラスターでは、電荷移動を直ちに起こすことが可能な非対称的な水和構造と、対称的な電荷移動が直ちには可能でない構造がほぼ同エネルギーで見出された。これまで、水和構造が明らかにならないまま電荷移動の議論が行われていたため、どちらの構造が実験的に見いだされているかに興味がもたれる。実験装置の構築を進め、これらの系に対する実験的測定を進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
10月から所属先の変更があり、12月から課題を再開したが、新しい所属先で建物の改修が予定されており、改修中の移動先の割り当てに時間がかかったため、実験装置の移転に取り掛かることができなかった。そのため、当初想定したように新たな所属先での実験環境の構築が進められなかった。そのため、この評価とした。 一方で、理論計算による新たな系の探索に時間を掛けることができ、いくつかの有望な系を見出すことができた。いずれも基礎的な反応への興味から研究が行われていたが、これまで溶媒の効果についてはあまり注目されていなかった系である。化学反応に伴う溶媒和構造変化に興味がもたれるうえに、すでに基礎的な情報が得られている点からも、今後実際に実験を進める点で有利な系を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
実験装置の構築を最優先に進める。溶媒和クラスターの超音速ジェット赤外分光を進められる環境を整備する。そのうえで、4-アミノベンゾニトリルや9-9’-アンスリルの水和クラスターに赤外分光を適用し、構造や反応性を実験的に明らかにし、理論的に予想された結果との比較を行う。これらの結果は、溶媒和ダイナミクスに対する定常状態の情報を与え、再来年度以降の時間分解研究の基礎になる。
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Causes of Carryover |
令和元年度は装置の移転を予定していたが、移転先の諸事情により実施することが困難であった。そのため、令和二年度からの移転・実験作業に資金的余裕を残すため、令和元年度は予算使用を行わなかった。 令和二年度には、実験装置の移転・整備、試薬等の購入に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)