2020 Fiscal Year Research-status Report
The role of intermolecular interaction in solvent reorientation dynamics ---A molecular scopic study utilizing time-resolved IR spectroscopy---
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19K05368
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
宮崎 充彦 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (00378598)
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Project Period (FY) |
2019-11-28 – 2023-03-31
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Keywords | 溶媒和クラスター / 溶媒和ダイナミクス / 赤外分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、光励起、化学反応に伴う溶媒和ダイナミクスを個別分子の運動に基づき分子論的に理解することを目的としている。特に、溶媒分子間の相互作用が溶媒和ダイナミクスにおよぼす影響を溶媒和構造変化の情報から実験的、理論的に明らかにすることに主眼を置く。 令和二年度は、4月当初から実験装置の移設を行う予定であったが、コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言などの影響により、移設時期が9月になってしまった。しかし、その後は実験設備の整備等の構築が順調に進行し、分光測定を行える状態を立ち上げることができた。 そこで、昨年度に理論的に検討した系として、複数の水を持つクラスターの4-アミノベンゾニトリル、および9,9’-アンスリルの水和クラスターにおける光励起に伴う構造変化を紫外・赤外分光から決定した。4-アミノベンゾニトリルの二水和クラスターでは、電子基底状態における安定構造を赤外分光により明らかにした。さらに、イオン化に伴う水和構造変化を赤外分光により追跡し、昨年度の理論計算から推測された二つの水分子間の水素結合が保たれる過程と、解離する二つの過程が実際に起きることが確かめられた。この二つの過程の割合はイオン化に伴う余剰エネルギーに依存することもわかり、現在、余剰エネルギー依存性の測定を進めている。 一方、光励起電子移動を起こす9,9’-アンスリルの水和クラスターでは、基底状態の赤外分光から電荷移動を直ちに起こすことが可能な非対称的な水和構造が安定構造として観測されることを明らかにした。しかし、電子移動を期待した励起状態では、赤外スペクトルはブロードな吸収を示すのみで、水和構造についての情報を得ることはできなかった。励起状態間の電子遷移が赤外光により生じるためと考えられる。今後、系を選定する際に考慮すべき要素としての基礎情報になると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
装置の移転が9月になったが、その後、装置の設置等が順調に進み、測定結果がコンスタントに得られるようになったことから、この評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
4-アミノベンゾニトリルの二水和クラスターの溶媒和構造変化の余剰エネルギー依存性、生成水和構造の確定、生成割合の推定を進める。さらに、溶媒和ダイナミクスに対する定常状態の情報を与え、来年度以降の時間分解測定の準備を進める。 一方で、理論計算からは有望であろうと考えていた9,9’-アンスリルの励起状態電子移動反応に伴う水和クラスターの測定は構造情報が得られないことがわかったため、新たな系の探索を進める予定である。
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Causes of Carryover |
令和二年度は若干の次年度使用額が発生したが、今後の配分額が少ないため、資金を有効に活用するために、すべての予算使用は行わなかった。 令和三年度には、実験装置の整備、試薬等の購入に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)