2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K05369
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大鳥 範和 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20272859)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 液体 / 溶液 / 回転拡散係数 / 分子動力学法 / ストークス-アインシュタイン-デバイの関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、代表的なガラス形成物質であるo-テルフェニルとそのモデル物質、またその構成要素であるベンゼン、またベンゼンと同様に盤状構造を有するナフタレンのそれぞれ純液体状態について、自己拡散係数と粘性率の評価を分子動力学法を用いて行った。その結果、これらの自己拡散係数と粘性率の積を温度で除した量が、数密度の1/3乗に比例することを見出した。この結果は、球状分子である希ガスや鎖状分子であるn-アルカン類の液体状態に対して見いだされた結果と、比例係数を含めて共通しており、分子スケールにおけるStokes-Einsteinの関係式として、多様な分子形状の液体に包括的に適用可能なことがわかった。また、o-テルフェニルについては、回転拡散係数の評価を併せて行い、回転拡散係数と粘性率の積を温度で除した量が、数密度に概ね比例するものの、温度の低下とともに逸脱することをを見出した。温度低下による逸脱は、液体領域では充填率依存性の顕在化、また過冷却状態での大きな逸脱は温度依存性の次数の変化に、それぞれ帰せられると結論された。またその比例係数は、前年度の研究結果から、分子形状に強く依存することが明らかとなっており、これに照らすと、OTPは、直線型分子としては、二酸化炭素と二硫化炭素の中間程度の異方性に相当すると結論された。また、o-テルフェニルのモデル物質は、半定量的に上記のo-テルフェニルと同様の挙動を示すことが明らかとなった。直線型分子の結果に照らすと、このことから分子形状が上記の挙動の支配的な要因であると結論される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要」欄に記載のとおり、本課題申請書の「1 研究目的、研究方法など」の「(3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか」の欄に記載した2年目に実施する内容をほぼ実施でき、さらに3年目の一部の計画を先行して実施できていると判断されるため。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度も、本課題申請書の「1 研究目的、研究方法など」の「(3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか」の欄に記載した3年目に実施する内容を、すべて予定どおり行う。すなわち、3年目は、実在系として、ビフェニルおよび水を対象に、それぞれ通常の液体および過冷却状態について、回転拡散係数の表式を導く。また、二原子分子からなる過冷却液体のモデル物質として知られているKob-Andersenポテンシャルを用いて、通常の液体および過冷却状態について、回転拡散係数の表式を導く。これらの結果に基づいて、Stokes-EinsteinおよびStokes-Einstein-Debye の微視的表式を導出し、過冷却状態での動的不均一性の新たな基準として、その挙動を個々の変数依存性に基づいて議論する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により、海外出張を中心に活動計画を中止・変更した結果、支出が大きく減少したため、次年度使用額が生じた。次年度は海外出張の予定を当初より中止し、経年劣化した高速演算装置の更新を優先して、大学院生を含めた研究活動環境の改善を進める。
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Research Products
(8 results)