2021 Fiscal Year Research-status Report
高感度時間分解THz分光法の開発と光エネルギー変換材料への応用
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19K05373
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
太田 薫 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 学術研究員 (30397822)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | テラヘルツ分光法 / 時間分解分光法 / 有機薄膜太陽電池 / 電荷キャリア |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで我々はジケトピロロピロール連結テトラベンゾポルフィリンとフラーレン誘導体とのバルクヘテロ接合型薄膜試料を対象に時間分解テラヘルツ分光法により、電荷キャリアの局所的な移動度の時間変化や周波数依存性を測定した。これまでの研究から、アルキル鎖の長さを変えることにより、試料を作製する基板に対する配向を制御することができる。アルキル鎖の長さが10のC10-DPP-BPでは、基板に対して垂直に配列することが知られている。このため、テラヘルツ電場に対して、電荷キャリアの移動が有利であると考えられる。これは、テラヘルツ光の電場が基板に対して水平方向に変化するためである。一方、アルキル鎖の長さが4のC4-DPP-BPでは基板に対して水平に配向しており、テラヘルツ光の電場に対する電荷キャリアの移動には不利である。しかし、両者の移動度に大きな違いが観測されなかった。このことは数nmレベルの局所的な空間スケールでは、電荷キャリアの移動度が分子配列や結晶のドメインの大きさに依らないことを意味している。また、可視領域の過渡吸収測定系を整備し、ジケトピロロピロール連結テトラベンゾポルフィリンとフラーレン誘導体とのバルクヘテロ接合型薄膜試料を対象に測定中である。ここでは特にジケトピロロピロール連結テトラベンゾポルフィリンのみの薄膜試料とフラーレン誘導体との混合薄膜試料の実験結果を比較することにより、励起子や電荷分離状態のダイナミクスについて調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルキル鎖の長さが異なる2つのジケトピロロピロール連結テトラベンゾポルフィリンバルクヘテロ接合型薄膜試料について、電荷キャリアの移動度を測定した結果についてはすでに論文として報告している。また、我々のこれまでの時間分解テラヘルツ分光法によるバルクヘテロ接合型有機薄膜の電荷キャリアダイナミクスについての結果や他の時間分解分光法で得られた結果を総説にまとめ、投稿した。現在、査読を経て、再投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は可視‐近赤外領域の過渡吸収測定により、これまで不明であった励起子などのダイナミクスについても測定し、有機薄膜太陽電池などの光エネルギー変換材料の励起子や電荷分離状態の生成や消失の詳細なダイナミクスを明らかにする。さらに亜鉛を含んだテトラベンゾポルフィリン誘導体の系に研究を展開する。昨年度、近赤外領域の検出器の不具合があるなどの問題があることがわかったが、原因を解明し、これまでに動作に支障がないことを確認した。近赤外領域の過渡吸収測定には白色光の強度分布を均一化するなどの課題が残されているが、これらの問題を解決し、測定を行えるように測定系を整備する。
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Causes of Carryover |
レーザーは定期的にメインテナンスが必要であるが、昨年度に引き続き、出力の大幅な低下などのトラブルがなく、レーザー調整費が発生しなかった。さらにコロナ禍で国内、海外出張ができなかったことなどが次年度使用額の生じた理由に挙げられる。今年度は過渡吸収測定系の整備や波長可変励起光源の構築を予定している。そのために請求した助成金を使用することを予定している。また、再生増幅器を励起するレーザーの出力は徐々に低下しており、メインテナンスが必要である。
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