2021 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical analysis on the intermediate length-scale structural formation induced by concerted intermolecular interactions and the possibility of its spectroscopic detection
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19K05384
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鳥居 肇 静岡大学, 工学部, 教授 (80242098)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 構造形成 / ハロゲン結合 / 水素結合 / 電子密度 / 振動分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
多数の異種分子が複雑に相互作用する混雑系における構造形成を捉えるにあたって,理論研究の立場から考えられる重要な課題は,「そうした構造形成の様相を予測し得る能力の向上」と,「構造形成と分光シグナルの対応関係の確立」であると考えられる。そのために,含ハロゲン化合物がタンパク質分子への薬剤活性を発揮するケースにおいて鍵となるハロゲン結合について,電子分布の異方性・分極の効果・置換基効果を正確に分離した精緻なポテンシャル関数系を整備するとともに,混雑系における静電環境のプローブとなる分光シグナルの特性や,双極子微分量が大きい官能基が混雑する場合における中距離的構造形成とスペクトル形状の相関に関する解析を進める。 令和3年度においては,ハロゲンが関わる中距離的構造形成の重要問題の1つとして進めている「フッ化水素の水素結合鎖の構造的特徴を生み出すメカニズム解明」について,電子構造論的に解析した令和2年度の結果を基にして,フッ化水素の分子間配置を妥当な範囲で多数(22513配置)発生させて分子間ポテンシャル関数を構築し,その有効性を分子動力学計算により実証した。また,ハロゲン結合に関わる電子分布の異方性を表現するための追加的点電荷 (extra point charge) の配置法における,ハロゲン原子依存性(ハロゲンが塩素やヨウ素となった場合)や置換基効果の解析を,前年度に引き続いて進めたほか,水素結合との協同効果により強度増大するハロゲン結合系を対象として,電子密度に基づいた解析を行い,強度増大のメカニズム解明を進めた。ハロゲン結合形成によりスペクトル強度が大きく変化する事例についても,解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度に引き続いて,「電子分布の異方性・分極の効果・置換基効果を正確に分離したハロゲン結合系の精緻なポテンシャル関数の開発」「中距離的構造形成とスペクトル形状の相関に関する解析」の双方について,進展を得ることができた。後者については,フッ化水素の分子間相互作用の詳細と水素結合鎖の構造形成の相関を電子構造論的に解析した令和2年度の結果を基にして,構築した分子間ポテンシャル関数の有効性を分子動力学計算により実証し,結果をまとめて,J. Phys. Chem. B誌に論文として発表したところであるうえ,ハロゲン結合形成によりスペクトル強度が大きく変化する事例の解析を進めている。前者については,令和2年度に引き続き,ハロゲンが塩素やヨウ素となった場合やベンゼン環の置換基による,追加的点電荷の配置法などへの影響の解析を進めているところであり,その一部は学会で発表したところであるうえ,水素結合との協同効果により強度増大するハロゲン結合系を対象とした解析についても,着実に進めている。このことから,「おおむね順調に進展している」と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
「電子分布の異方性・分極の効果・置換基効果を正確に分離したハロゲン結合系の精緻なポテンシャル関数の開発」については,ハロゲン原子依存性と置換基効果の解析と,水素結合との協同効果により強度増大するハロゲン結合系を対象とした解析の双方において,進展が得られているところであるので,さらに進めることにより,体系的なポテンシャル関数の開発を目指すとともに,実在系への応用による一般性の実証を進める。また,ハロゲン結合形成によりスペクトル強度が大きく変化する事例の解析においても,進展が得られており,さらに進めることにより,「中距離的構造形成とスペクトル形状の相関に関する解析」について,混雑系における静電環境のプローブとなる分光シグナルの特性の解明をおこなう。
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Causes of Carryover |
計算サーバに関わる物品の一部について,想定より少々長持ちしたものがあったため,わずかな次年度使用額が生じた。 成果とりまとめのための追加的解析に必要な費用や,成果発表に必要な費用に利用する計画である。
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