2019 Fiscal Year Research-status Report
枯渇力によるジアリールエテン超分子構造体の階層的組織化と光駆動運動
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19K05400
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東口 顕士 京都大学, 工学研究科, 講師 (90376583)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジアリールエテン / 超分子構造体 / 枯渇力 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究で用いているジアリールエテン超分子構造体は、トリエチレングリコール鎖を側鎖に有する両親媒性ジアリールエテンからなり、LCST(下限臨界溶液温度=低温で水溶性が増す現象)転移を光誘起することで超分子構造体が形態変化する。一般にマイクロメートルサイズでの光誘起形態変化は分裂を伴うために不可逆であることが多い。我々の過去の研究において、枯渇力を作用下させるとファイバー状の超分子構造体同士が配向を揃えて凝集するため、光可逆な形態変化を実現できることを見出した。なお枯渇力とは、コロイド粒子が高分子溶液中に分散しているときに作用する引力のことで、疎水性相互作用と同様の性質を有するが、疎水性相互作用が主として分子サイズで作用するのに対し、枯渇力は数百ナノ~数百マイクロメートルサイズで作用する点が異なる。本研究では、ファイバー以外の様々な形状の超分子構造体を用いた検討を行っている最中である。 シート状の超分子構造体を得て、枯渇力の作用下における形態変化を観察した。まず枯渇力が無い場合、ナノ形状はシート状~房状でありながらマイクロ形状としてはほとんどの場合丸まっていた。これはナノシートとベシクルの関係とほぼ同じであり、表面張力に由来した現象であり、マイクロ形状がシート状の物はほぼ得られなかった。一方で枯渇力の作用下においては、シート状の物が多量に得られた。光に対する応答性も残していたことから、簡便に大量のマイクロシートを得る方法として利用可能と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画における予想とほぼ合致した結果が得られた。詳細は「研究実績の概要」に記載されている通りで、初年度において必要なデータは大凡得られたと考えられる。現在論文執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、微粒状(0次元)、ファイバー状(一次元)、シート状(二次元)の超分子構造体間における光誘起形態変化と、枯渇力がその形態変化に与える影響について検討した。現在はベシクル、すなわち部分構造は二次元だが全体としては三次元の超分子構造体を形成するような分子構造の探索を行っている。これについても完成次第、枯渇力による形態変化への影響を検討する予定である。 また形態変化の可逆性という点では、光照射前の超分子構造体がサブミリメートルサイズで場合には形状復元が困難であることが確認された。枯渇力はサブミリメートルサイズにまで超分子構造体を大きく出来ることがメリットであるが、現状では復元性との両立が難しい。元の形態を保つために、分子設計を変更して側鎖にビニル基を導入し、超分子構造体の状態で重合することも視野に入れている。このビニル誘導体は、これまでに得られた両親媒性ジアリールエテン誘導体とは形成する超分子構造体の形状が異なっていたため、上述の新しい構造体を得ることにも繋がるが、一方で構造体の形状およびLCST温度の予想がこれまでの知見とはかけ離れていることが、これまでの実験で確認されている。今後、いくつかの誘導体を合成しながら検討を行っていく。
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Causes of Carryover |
年度内に予定していた研究は予定通りに進んだが、実験の試行錯誤のために必要と考えていた費用もほとんど発生しなかった。次年度にこの状況が続くとは限らず、そこでの試行錯誤や新たな測定計画に対して使用することを考えている。
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