2019 Fiscal Year Research-status Report
粘土層間のフレキシブルさを利用したクロミズム材料の開発
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19K05403
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
鈴木 康孝 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (30634753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
守友 博紀 津山工業高等専門学校, 総合理工学科, 助教 (30803548)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 無機ナノシート / 粘土鉱物 / 光機能性材料 / 光物性 / 物理化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
粘土鉱物の層間環境は外部刺激によりフレキシブルに変化させることができる。本研究では、粘土鉱物の層間に取り込まれた有機化合物の「色」が層間環境の変化に対応してスイッチする、新しいメカニズムに基づくクロミズム材料を開発する。応募者はこれまでの研究で、粘土鉱物の層間環境を独自の方法で制御することで、層間に取り込まれた有機化合物が「感じる」環境場をフレキシブルにチューンし、有機化合物から優れた機能を引き出してきた。一方、我々がこれまでに開発できているクロミズム材料は、発光色は大きくスイッチングするものの、吸収波長、すなわち「人間の目」で「見るだけで」変化がわかるほど色調が変わる材料は得られていない。 そこで、本研究ではこれまで蓄積してきたノウハウに基づき、粘土鉱物の層間環境を①温度の変化、②湿度の変化、③大気中に存在する有害物質の3種の外部刺激により変化させ、それぞれの外部刺激に応じて有機化合物の色が変化する材料の創出を目指す。 粘土鉱物-有機化合物ハイブリッド材料は、有機化合物が潜在的に持つ電子的性質を最大限引き出しうる材料であることに加え、無機化合物が持つ加工性・安定性・耐久性を併せ持つ。そのため、センシング材料、発光材料、人工光合成材料などのさまざまな電子・光機能性材料への応用が期待されている。本研究でもたらされる知見は、クロミズム材料のみならず、層間環境の機能への影響が大きい上述の機能性材料の特性改善にも有用となる。したがって、ハイブリッド材料開発の学理の発展に寄与するのに加え、将来的には高機能なデバイスの創造にもつながり、持続可能な社会の実現への貢献が可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までのところ、温度の変化に応答するクロミズム材料の開発に成功している。粘土鉱物の層間に存在する水は、①粘土の層表面や交換性イオンに配位している配位水と、②バルク水に大別できる。粘土鉱物を脱水すると、層や交換性イオンとは何の相互作用も持たないバルク水が先に抜け、配位水のみが残った状態を作れること、残った配位水は、プロトン供与性を有することが1970年代に報告されている。そこで、pH指示薬を層間に導入したハイブリッドを作製し、加熱に伴う脱水により劇的に色が変化する材料を開発することに挑戦した。 有機物を含まない粘土では、バルク水の脱離は、常温から120℃の範囲で連続的に生じる事が知られている。しかしながら、有機物を取り込んだハイブリッドにおける脱水挙動は研究例がない。そこで、層間へのpH指示薬の導入量を系統的に変化させた試料を用い、pH指示薬の導入量とハイブリッドの状態での脱水挙動との関係を熱重量分析(TG) 測定により明らかにした。このことにより、常温から120℃の間でバルク状態の水の脱水が連続的に生じることを見出した。バルク状態の水の脱水が連続的に生じる条件下で、取り込んだpH指示薬の色調を連続的に変化させることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の予定通り、②湿度の変化、③大気中に存在する有害物質の3つの外部刺激に応答するクロミズム材料の開発に向けた研究を推進する予定である。また、これまでの研究で、クロミズムが生じる原因が、プロトンの付加による分子構造の変化にあることを明らかにしているため、このメカニズムを上手く利用したさらなる機能化にも取り組む予定である。具体的には、励起状態におけるプロトン移動で蛍光波長が大きく変化する現象であるESIPTを粘土層間で行うことで、温度・湿度でESIPTをコントロールすることも可能ではないかと現在考えている。さらに、他の物性についても制御できる可能性があるため、そのことも含めた検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度中での論文の投稿を目指していたが、間に合わなかったため次年度使用額が生じた。そのため、次年度の論文投稿料と論文校閲料として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)