2020 Fiscal Year Research-status Report
粘土層間のフレキシブルさを利用したクロミズム材料の開発
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19K05403
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
鈴木 康孝 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (30634753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
守友 博紀 津山工業高等専門学校, 総合理工学科, 講師 (30803548)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノシート / 物理化学 / 機能物質科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
粘土鉱物への有機分子の吸着挙動の精緻なコントールを可能にするため、令和2年度には粘土鉱物の層電荷を制御する方法の開拓に取り組んだ。具体的には、出発原料の組成を制御しながらサポナイトを合成する方法、ホフマンクレメン効果を利用し、モンモリロナイトの層電荷を減じる方法の二通りの方法を用いた。組成を変化させながらサポナイトを合成する方法を用いることで、層電荷の異なるスメクタイトを合成する方法においては、異なる層電荷を有する粘土鉱物を得ることには成功した。一方で、合成した粘土鉱物の水への分散性に問題があった。系内の一部が、超音波処理を行なっても全く分散せず、有機分子と混合して作成するハイブリッド材料の均一性を担保出来ないと考え、別の方法に取り組んだ。 系中の交換性陽イオンを全てリチウムイオンで置き換えたモンモリロを加熱し、系中のリチウムイオンが層内に入り込むことで電荷を消失させるホフマンクレメン効果を用いて、モンモリロナイトの層電荷のコントロールを行なった。この方法論においても、層電荷が異なる粘土鉱物を作製することが可能であった。試料の量と加熱する温度・加熱時間を調整することで、陽イオン交換容量で表すと1.17から0.7 meq/gの範囲で電荷の制御が可能であった。電荷の平均距離で表すと0.7から1.1 nmまでの距離のコントロールに成功した事になる。この距離は、ちょうど電子移動やエネルギー移動が生じるために、クリティカルな範囲の距離であるため、表面に吸着した分子の電子・エネルギー移動が制御できる可能性が高い。また、水への分散性は、元のモンモリロナイトと同様であったため、均一で層電荷が制御された粘土鉱物を製成することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに刺激に応じてソフトに応答し、分子関相互作用が精緻に変化する材料の構築に取り組んできた。本年度得られた成果を、これまでの技術と組み合わせることで、より詳細に分子の性質をコントロールできるようになり、より機能性に富んだ材料設計が可能になるため。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度では、令和2年度に得られた層電荷を変化させた粘土鉱物を積極的に研究に利用し、分子の電子的性質をより詳細にコントロールできるようにする。これにより、これまで可能であったマクロな物質の操作技術である分子の導入量のコントロールに加え、数ナノメートルのオーダーでの変化を誘起できる層電荷密度のコントロールを組み合わせることで、ミクロなオーダーでのコントロールに基づいたマクロな物性の制御に取り組んでいく予定である。加えて、有機分子だけでなく、金属錯体や金属クラスターなど、あまり粘土鉱物の複合化に用いられていなかった材料も積極的に利用し、それらの物質の電子機能の開拓にも取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
おおよそ全ての予算を執行したが、予算に少しあまりが生じたため、次年次の消耗品代として使用する予定である。
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Research Products
(8 results)